会敵
連合艦隊はスペシガン向けて進んでいる。
「敵砲台及び艦隊を確認しました」
「結構。状況は?」
スペリオル湖の上を飛ぶことおよそ二時間、やっと敵の姿が見えてきた。
敵は、湖上に浮かべた要塞と、その上に浮かぶ艦隊である。湖上要塞とは、湖に浮かべた巨大なフロートの上に、大量の砲台やミサイルを載せたものだ。
更に、それが複数用意され、五大湖を湖上要塞足らしめている。また、敵艦隊は、連合艦隊のおよそ半分の戦力である。
「予想より、少ないな」
「はい。もしかしたら、敵にとってここは、決戦の地には含まれないのかもしれません」
「だとすれば、我々の包囲殲滅作戦は、まったく機能しないな」
現在、連合艦隊は横に並びながら進軍するという、はたから見たら、奇妙そのものの陣形をとっている。これは、陣形の両翼を内側に畳むことで、攻撃してきた敵を包囲する為である。
しかし、敵が戦いを望まないのならば、こちらに攻めてくるとは考えにくく、したがって包囲も困難だと思われた。彼のハンニバルも、自身を囮とし、ローマ軍を挑発しなければ、カンネーの勝利は掴めなかった。
「つまり、敵を誘き寄せればいいのですね」
そう言うのは、東條中佐である。
「何か、策でもあるのか?」
「方法は簡単です。この大和を餌に、敵を中央に誘き寄せればよいのです」
「ほう、どうすると言うのだね?」
「大和を、艦隊中央の最前列に置きます。自分の目の前に敵の旗艦があれば、襲いたくなるでしょう。もっとも、敵が凡将ならですが」
つまりハンニバルのやり方である。
「確かに、そうだな。まあ、敵が決戦を志向していない時点で、作戦は破綻するのだから、ダメ元でいこうじゃないか。ああ、それと、近衛大佐はどう思う?大和は危険に晒される訳だが」
「大和は傷つけないで欲しいですが、作戦に必要であれば、私は構いませんよ」
「結構」
近衛大佐の了解も取れた。連合艦隊は進む。しかし、連合艦隊は、予想外に早い攻撃に晒される。突如、連合艦隊の前方から、無数の光点が飛んできたのだ。
「敵ミサイル接近!カルガリーと同じものです」
「またか。全艦、全力で迎撃せよ」
連合艦隊は、ミサイルを組織的に迎撃し、大半を撃ち落とす。対空ミサイルと対空砲弾は、見事にミサイルを撃ち落としている。しかし、やはり全てを落とすのは無理だ。一部は、防御をすり抜けて艦隊に当たる。
「しかし、何処から翔んでくるのでしょうか、このミサイルは」
翔んできたミサイルは、明らかにスペリオル湖の要塞からのものではない。さらに奥から翔んできている。
「第2波、来ます」
「くっ、これは不味いな。このミサイルを迎撃し次第、陣形を再編し、半輪形陣をとれ」
連合艦隊は、横に広がる横陣から、空母を中心に半円を作り出す半輪形陣に移行した。
東郷大将が恐れたのは、未知の長射程ミサイルと、スペリオル湖からのミサイルを同時に使われたとき、対空能力が飽和状態になることである。
故に、対空能力が高い密集陣形をとることにしたのだ。
「閣下、この状況では、まず湖上要塞を沈めるべきです」
「ふむ、そうだな。全艦に、湖上要塞を狙っておくよう伝えよう」
まず、優先目標は、大量のミサイルを積んだ湖上要塞の破壊からである。
「全艦、陣形を保ったまま前進せよ」
連合艦隊は、米艦隊に向かっていくのだった。




