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終末後記  作者: Takahiro
2-8_ヨーロッパ統一戦争
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コンスタンティノープルの戦いⅣ

「おい!あれ!」


戦友は氷山戦艦の方を指差した。タラップなど関係なく、その穴から飛び出してくる戦車の群れが見えた。それらはどんどん出てくる。


そしてジョバンニは望遠鏡を覗いた。見るに、ヨーロッパ国軍も自由アフリカ軍も日本軍も、上陸にタラップなど必要内容である。戦車や装甲車の壁に掴まり、それらと共に地上に降り立っていた。


「くっそ。やられた…」


氷山戦艦にしてやられたのは純粋に悔しかったが、ジョバンニには何も出来なかった。ただ敵軍の雄姿を眺めることしか出来ない。


「どうなっちまうんだ?」


「さあ。わからない」


戦況が絶望的に悪いということだけはわかった。


「…え…ぜん……」


その時ジョバンニの通信機から人の声のようなものが聞こえた。


「もっと電波の良いところへ」


「わかった」


通信機を持ち、近くの高台に登る。同時に周囲から電波に干渉しそうなものを取り除いた。すると声が鮮明に聞こえてくる。


「…応答せよ。繰り返す。こちらHQ…」


「おい!聞こえるか?」


味方からの通信であるのは間違いない。ジョバンニは藁にもすがる思いで応答した。


「生きていたのか!所属は?」


向こうのオペレータは喜んだ。しかしそれは不安を増長するだけだ。普通、兵士一人が応答したくらいでオペレータが感情的になったりはしない。


「コンスタンティノープル東部防衛師団、第三大隊、第四小隊だ」


「あの区画か。よく生きていたな…」


「現況を教えてくれ。どうなってる?」


そしてオペレータが告げたのは残酷な事実だ。全ての砲台が悉く精密砲撃され、残存する砲台は皆無。おまけに広域通信にも全く応答しない。またジョバンニがいる辺りは特に激しい砲撃を受けたそうだ。


彼曰く、生存者が二人もいるには奇跡的であると。


「で、どうすればいい?」


上官も死んで指揮系統は崩壊した。ジョバンニらは何もない虚空に放り出されたも同然だった。


「もう砲台がない以上、地上戦に参加してもらうしかない。いいな?」


「はい。だが武器がない」


彼らはあくまで砲の操作を担当とする兵士だ。白兵戦に使われるような武器は保持していない。精々護身用の拳銃があるくらいだ。


「それならば、北の第七武器庫に向かってくれ。歩兵用装備が余っている」


「了解」


「それと、他にも生存者はいる。彼らにも第七武器庫に集まるよう言ってあるから、そこで一旦待機してくれ。次の命令は追って出される」


「以上か?」


「以上だ」


そしてジョバンニらは歩き出した。第七武器庫までは3kmほど。まあすぐに着く距離だ。


途中、吹き飛ばされた砲台をいくつも見かけた。それに比例する数の死体も。そういうものからは目を逸らし、先に進んだ。


「おお、それなりにいるか」


「そうだな。少し安心したよ」


第七武器庫の前には数十人の兵士があった。機動装甲服で武装した者、殆ど丸腰の者、割合は半々くらいである。


「お前たちも生き残りかぁ!?」


気の良さそうな士官が叫んできた。ジョバンニはその旨を伝える。


「わかったぞ。よし!こっちに来い」


そして二人は武器庫の奥に連れて行かれた。


武器庫は殆ど空の状態であったが、奥の方に行くと、少しだけものが残っていた。その中には機動装甲服もあった。


「お前たち、まずはこれを着ろ!やり方はわかるか?」


「はい。まあ」


とは言え、実際に着てみたのは練兵場の中だけである。そして、朧げな記憶を辿りつつ、ぎこちないながらも、一応は機動装甲服の着用に成功した。同時に側にあったバトルライフルも手にする。


全身が軽くなっている。バトルライフルなんかプラスチックのおもちゃのように軽い。それに加えて並みの銃弾なら弾き返す装甲である。端的に言って万能感がある。


「よしっ。じゃあ、外で待っててくれ」


「了解です」


そして武器庫の外で待つことになった。機動装甲服を着ていると、ひたすら立っていても疲れの類を一切感じなかった。


やがてさっきの士官が出てきた。


「諸君!いいかな?」


皆の注意が彼に集まった。


「私はルーデル中佐だ。ドイツ人だが、ちゃんとギリシャに勤めている。そして今から諸君らの上官になる!」


辺りがざわつく。当然だ。まさかこの男が自分らの上官だとは、全くもって想像していなかった。それも、ここにいるにしては高すぎる階級の男だ。


「既に地上戦は始まっている!今は持ち堪えているが、危ない状況だ。そこで諸君には、敵主力部隊を背後から襲撃する任務が下った!」


「え。マジかよ」


ジョバンニは生命の危機を大いに感じた。元は砲兵、白兵戦の関してははっきり言って雑魚である彼らが、最も危険な役割を押し付けられたのだ。




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