元老院Ⅱ
三章最初のサブストーリーです。
時は、日本軍がアメリカ諸都市を次々と制圧している時である。
皇居では、恒例の元老院が開かれていた。
「陛下、このまま軍に連勝をさせてよろしいのですか?」
「ならん。戦争は、長期化が望ましい」
天皇は、さも当然のことのように、元老に告げた。
「御意。ならば、五大湖での敗北が適切でしょう」
「そうせよ」
「承知しました」
元老院は、誰にも見られない秘密会議だ。その議事録なども、当然ながら公開されない。そこで決定されるのは、国民に伏せるべき内容である。
「震洋の開発は、順調か?」
天皇は、臣下に尋ねた。
「万事、順調でございます」
「ならばよい」
しかし、その時、珍しく異論が飛んできた。
「奴らの力を借りすぎではないのでしょうか。最悪の場合、主導権を奴らに握られるやもしれません」
「心配には及ばない。朕の天照の力は、冥府の力を凌駕するものである」
「陛下がそうおっしゃられるにならば、臣はそのお力を信じるのみであります」
元老は、すぐに引き下がった。
「つきましては、五大湖についての交渉の為、例の如く、撥条塔に元老を派遣しましょう」
「ならば、私が行きましょう」
「うむ。異議なし」「異議なしだ」
そして、元老達は、一瞬で派遣する者を決めた。
「伊達よ、撥条塔で戦局交渉を行え」
「御意」
もとより、勝敗調整を説く華族、伊達が送り出された。
元老院のこの決定は、帝国の全てを動かすのだろう。それはいつものことである。




