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終末後記  作者: Takahiro
1-3_五大湖攻防戦
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大侵攻

崩壊暦214年6月19日09:26


「セントポールまで、残り30kmです。そして、敵は、逃げたようです」


「セントポールより、無防備都市宣言です」


「結構。セントポールを制圧せよ」


現在、東郷大将率いる連合艦隊は、アメリカ連邦北部を東に侵攻している。


しかし、ほとんどの都市で抵抗はなく、連合艦隊は、着々と五大湖要塞に迫っていいる。


早速、セントポール側は、いつものように、抵抗を放棄したようだ。都市外縁部の高射砲は下ろされ、対艦ミサイルランチャーも停止している。


因みに、無防備都市とは、その都市を当該国の軍隊に使わせないことであり、実質的には、その都市だけの無条件降伏のようなものだ。


「今回も、無血開城といったところですかね、閣下。いや、楽でいいですな」


近衛大佐は、冗談のように言う。


「それはそうだが、流石におかしいと、大佐も思うだろう?」


「確かに、そうは思いますな」


「まあいい。ひとまずは、貰えるものは貰っておこう」


帝国軍は、釈然としない思いで都市を制圧してきた。これまで散々に抵抗してきた米艦隊が、ひたすら逃げるだけとなれば、そうも感じるだろう。戦略には門外漢の近衛大佐でも、それくらいの道理はわかる。


「しかし、敵は逃げるのが上手いですね。私達は、一度も追い付けてはいないです」


「それだけ、敵も計画的なのだろう。まったく、都市をこう簡単に棄てるなど、帝国は絶対にしないぞ」


帝国に、撤退の文字はない。勝利か、玉砕か、である。


「アメリカ人も、案外、薄情なのですね」


「合理的では、あるがな」


これまで連合艦隊は、一度も米艦隊を攻撃できていない。連合艦隊が都市に迫ると、それに合わせたように、都市を離れていくのだ。


逃げるといっても、米艦隊のそれは、ただ逃げるだけではない。計画的な。かなり高度なものだ。


「それに、鉄道の破壊は悪質です」


「ああ、厄介だな」


米艦隊は、都市を撤退する際、必ず都市の鉄道を破壊していく。


世界の殆どの都市は、広大であるが故に、鉄道が縦横に走っている。また、すべての都市は計画的に建てられたから、それは非常に効率的に設計され、都市の中での移動は、とても便利なものである。


それを破壊すると、一気に都市の利便性が落ち、占領もしづらいというものだ。


「大和、セントポールに、着陸座標を通達せよ」


「了解です」


連合艦隊は、セントポール上空を飛行し、やがて、その空港に降り立っていく。


事前に通達したため、滑走路はもぬけの殻である。


連合艦隊は、地上部隊を展開し、占領に勤しむ。 


東郷大将は、基本的には、占領した都市本来の統治機構を生かす方針をとる。市民生活への影響を少なくとどめる為の配慮である。


「第三大隊には、対空砲の更新、整備を行わせる。第一、第二大隊は、治安維持。他は待機だ」


もはや、連合艦隊には馴れた仕事である。いつも通りに占領は進んでいく。


対空砲は、五大湖要塞の付近ということで76cmクラスのものが用意され、セントポールは、軽く要塞へと変貌していく。


「ここが、五大湖への最後の都市ですね」


「そうだな。次は、五大湖要塞だ。激戦を覚悟しなければ」


東郷大将は、米軍の五大湖決戦の意図など、当然ながら、理解している。また、それを制す困難さもだ。


アメリカ連邦最大の要塞である、五大湖要塞と、デトロイトやスペシガンに控える大艦隊。それらは、帝国軍の行く手を阻むだろう。


「閣下、大和も、活躍できますかね?」


「勿論だ。存分に、働いてもらおう」


第二次太平洋戦争最大の戦い、五大湖の戦いは、すぐ側に迫っている。




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