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終末後記  作者: Takahiro
2-7_バイカル湖攻防戦
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空挺投下

紆余曲折を経て、概ね内親王殿下の作戦で征くこととなった。


「全艦、準備万端です」


「よーし。全艦、作戦開始!」


まずは作戦の第一段階、艦隊をバイカル湖に投下せねばならない。


正面はキエフが待ち構えており、実行は困難と言える。しかし側面では戦力で優っており、そこに水上戦力を集中、投下する。


またそれを偽装する為、鈴木大将の近衛第一艦隊自身も積極的な攻撃を仕掛ける。


「第一艦隊、キエフは無視だ!後ろの艦隊を狙え!」


キエフを撃っても砲弾の無駄である。第一艦隊は限界まで前進し、キエフの背後の艦隊を射程に収め、砲撃を開始した。


「敵、ミサイル攻撃、砲撃を始めました」


「問題ない。兎に角敵を引き付けよ」


正面同士においては戦力は拮抗している。両軍とも互角の勝負だ。だが、射程の限界でな撃ち合いということで、命中率は低い。


また、キエフの攻撃もさしたる脅威とはなっていない。最初の遭遇戦の時こそ衝撃は大きかったが、撃破を諦めてみると大したものではないのである。


攻撃に鉄を使えない以上、その火力は一段劣らざるを得ないだろう。


「キエフ、動き出しました!」


「ほう、どう来るんだ」


キエフのエンジンが出力を増し始めた。と同時に、帝国艦隊に向かって急速に突撃してきた。


「窮余の策だな。予定通り、暁と霞に迎撃作戦を伝達せよ」


攻撃が一切効かない化け物が迫っているというのに、艦橋は落ち着いていた。帝国軍の作戦は、駆逐艦を以てキエフを特攻を仕掛け、足止め若しくは撃沈を図るというものである。


やはり、人が作ったものならば、それに対抗する手段は必ずあるのだ。


しかしキエフは予想外の動きを見せ始める。それは艦隊に突撃することなく、その外側を迂回するような軌道を取った。


「ちっ、面倒なことをする。暁と霞以外は、ミサイル迎撃以外、無視だ。何ら特別な脅威となることはない」


キエフも所詮は五月蝿い虫のようなもの。無視に徹すれば何も問題はないのだ。


「閣下、宜しいですか?」


内親王殿下は言う。


「何でしょうか?」


「はい。キエフの狙いは、この和泉だと思います。本艦の防御を固めるべきかと」


「確かに、そうとも考えられますな」


戦艦和泉は、艦隊中央より少し後方に下がったところから指揮をしている。確かに、艦隊の後ろから突入した方が、和泉に到達出来る可能性は高い。


「ならば、ちょっとした嫌がらせをしましょう。駆逐艦全艦、我を中心に、後ろを守るよう、弧状に陣を敷け」


残りの駆逐艦全てを動員し、和泉を守る壁を作る。これでキエフに背後から殴られる心配はない。


またその間も、暁と霞はキエフを追っている。


「キエフ、減速しています」


「かわいそうに、図星だったのかな」


「そのようです」


減速したキエフは船首を反転させ、今度は反対方向に加速していった。


狙いを見破られ悔しがっている様子が目に浮かぶ。そう思うと、キエフの姿すら哀れに見えてくる。


キエフは結局敵艦隊の中に戻っていった。


正面の戦闘で動きは生まれそうもない。ただ機械的な砲撃が続けられた。


「第二艦隊、湖上に到達、いつでも投下を開始出来ます」


「わかった。少し待てよ」


大きな問題がない限り、側面の指揮は任せっぱなしだった訳だが、問題なくいったらしい。やはり2倍という戦力差は大きい。


「しかし、敵の中央の艦隊が動かんな」


「不気味ですね」


戦闘が始まってこの方、イルクーツクの真上に控える1個艦隊が微動だにしない。これが帝国軍の動きを消極的にしているのだ。


それは現存艦隊主義の縮小コピーなのか、或いは他に狙いがあるのか、その判断は出来なかった。


「こう迷っている時間こそ、敵の真の狙いだろう。よって、即座に投下作戦を開始せよ!」


それは賭けではあった。


敵の行動の一歩先を行くことによって主導権を握るという、何かの拍子に簡単に崩れ去る作戦だった。


しかし鈴木大将は躊躇うことの方をより嫌った。


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