サンフランシスコにて
サブストーリーです。
今回はちょっとふざけてみました。
サンフランシスコは、大日本帝国の傀儡国家たる新生アメリカ連邦の首都となった。
奇しくも欧州にてヘス総統の皇帝即位が囁かれる時分、北米にても同様の画策が始まっていた。
天皇の命を受けた伊達公爵は、ルーズベルト大統領のもとを訪れた。
「ルーズベルト大統領、大本営は、あなたの皇帝即位を望んでいます」
伊達公爵は切り出した。
「皇帝ですか。大きく出ますね」
「あなたに断る理由はないでしょう」
「確かに」
私利私欲にしか興味がないルーズベルト大統領にとっては、民主主義の擁護などどうでもいい話だ。それは大本営の誰もが知るところ。
「しかし、一応は聞いておきたい。どうして今になってそのような話を?」
「我々に大義名分が不足した、そう言えば、わかるでしょう」
「なるほど。それで私を」
現在の対米戦の大義名分は、不当に簒奪されたアメリカ連邦の主権の回復としている。しかし、そもそもの敵国の主権を取り戻すのに帝国が協力する理由はない。
そこで新たな大義名分を得ようとしたのが大本営の意思である。
「民主主義の破壊、専制政治の導入、強力な軍部の創設、宜しいですな?」
「ええ、私が皇帝たる限り、喜んで」
新たな大義名分、それは、今次の戦争を引き起こしたアメリカ連邦の構造の打破である。
戦争を招く衆愚政治、支持稼ぎに奔走する政治家、政府に介入出来ない惰弱な軍部、それらを全て破壊する。
もちろん「皇帝ジョシュア・ルーズベルト」もしくは「ジョシュア1世」は帝国の傀儡である。
ちょうど旧満州国の初代皇帝溥儀と同じ立場と言えるだろう。清国最後の皇帝というのも似ている。
「では、性急でしょうが、少なくともあなたの意思としては皇帝即位を望むということで、宜しいですか?」
「はい。もちろんですよ」
「それは良かった。今後も何かと協力して頂きますが、宜しくお願いしますね」
「ええ」
二人は麗しい握手を交わした。そして伊達公爵は席を立った。
「ルーズベルト朝アメリカ帝国、か。吐き気がする」
伊達公爵は誰にも聞かれぬよう呟いた。




