ある男の記憶Ⅰ
いきなりの時間を無視した投稿です。
しかも、謎しかない過去編です。
サブストーリーです。
「臨時ニュースです。臨時ニュースです。
西川総理大臣は、たった今、米国へ宣戦を布告しました。
繰り返します。
西川総理大臣は、たった今、米国へ宣戦を布告しました。
首相は、今回の宣戦の理由として、米国による世界経済の私有化、先の、中国への不当な侵攻、スコットランド侵攻を上げており、これらの不正を退け、世界に正義をもたらすと宣言しました。
また、同時にフランス、ロシア、ドイツなどの31カ国が米国に宣戦を布告し、人類解放戦線の創設、恒久的な人類の解放を宣言しました」
テレビ、ラジオ、あらゆるところから流れるこの放送が、全ての始まりだった。
そんな時代、「彼」は日本の軍人、それも少佐であった。
連合軍は東西からアメリカに侵攻し、その先陣を切ったのは日本軍であった。
戦争では、多数の新兵器が使用され、特に飛行戦艦の登場は戦争というものを変えた。世界中、陸海問わず、どんな場所にも戦艦と同レベルの火力を投射できるようになり、空を制したものの優位は絶対化された。
たちまち、飛行戦艦は主力兵器になっていき、世界各国が生産を始めた。
その中に、「大和」はあった。そして、彼は、その乗組員として配属された。
大和は日本国内の技術の結晶であり、世界最強と呼ばれた。戦争では、大和はその名に恥じない大活躍を見せ、また、大和の活躍は、機関長に昇進した彼の誇りであった。
しかし、戦争は唐突に終わりを迎えた。
人類解放戦線の生物兵器、それは文明をことごとく破壊し、戦争など立ち消えになった。
夕暮れ時、人の気配が消え失せた荒野に、彼と、大和は佇んでいた。
「なあ、大和。これから、人類は滅ぶのかな」
「ああ、何故だか、君と私はどうも生きているらしい。この滅んだ世界を二人で楽しむのも悪くないかもな。なに、機関長の私がいるんだ。君をしっかり動かしてやるさ。最後は、そうだな、いっそ九州沖に沈むのも悪くないかもな」
彼は、屍人と兵器の残骸に囲まれながら、少し楽しそうな様子で語っていた。