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終末後記  作者: Takahiro
2-7_バイカル湖攻防戦
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いつもの二人Ⅱ

本日のサブストーリーが何故か消えましたね。

「あと、まあ、お二人なら問題ないと思いますが、少々気をつけて欲しいことがあります」


鈴木大将は言う。


「ほう、何だ?」


「敵軍は既に白兵戦術を経験しています。従って、何らかの対抗策を繰り出してくると思われます」


「具体的にはどのようなものが?」


「最も簡単なものでは、艦内に設置機関銃やらを大量に配備してくると予想されます」


米軍との戦闘詳報は既にこちらにも届いている。それは同時に、より洗練された白兵戦術が必要であることを示した。


震洋も桜花も、命中さえすれば、その後の勝率は十割と言っても過言ではなかった。ソビエト軍にも米軍にもそのような戦闘教義が皆無だったからである。


しかし敵は急速に学びつつある。


重機関銃や設置機関銃の圧倒的火力により、侵入した屍人の群れを粉砕するのだ。ロッキー山脈の戦いは白星に終わったが、少なくともその戦術が有効であることも証明された。


「なるほど。ネサクはあまり関係ないでしょうが、私には問題ですね」


「何か、考えはありますか?」


「そうですね……普通なら狙撃銃で何とかしますが、設置機関銃となると、少々厳しいものがありますね」


正面突破があまりにも無謀であるならば、アウトレンジ攻撃で突破するにが常道だ。しかし設置機関銃となると、戦艦の端から端までが射程圏内である。クラミツハ愛用の狙撃銃では攻略は厳しい。


「まあそう言うだろうと思いまして、こういうものがあるのですよ」


鈴木大将は侍従に何かを取りに行かせた。やがて、かなり長いケースに入った何かが届いた。開けると、中身は狙撃銃であった。


「こういうものがあるなら、先に言ってください」


「いや、もしクラミツハさんに策があったら、恥をかくだけだと思いましてね」


「そうですか。まあいい。触っても?」


「ええ、ご自由に」


それは狙撃銃にしても巨大長大の部類に入る銃であった。だいたいクラミツハの身長くらい、170cmはあると認められる。


「弾薬は?」


「九六式実包の強装弾です」


「九六ですか。なるほど。帝国軍も狂気的な銃を作りますね」


「いえいえ、それほどでも」


九六式実包とは、本来ならば設置機関銃に装填されるべき弾薬である。帝国軍はそれ(しかも強装弾)を使える狙撃銃を開発してしまったという訳だ。


もはやこれを狙撃銃とは呼べまい。狙撃銃から対物ライフルすら飛び越した先を行く何かがここにある。


「これならバリケード程度なら幾らでも破壊し放題と」


「そういうことです。まあ撃たれないように伏せて使って下さい」


「了解しました。他に何か?」


「いいえ、特には」


「こちらもありません。ですよね?」


「ん?ああ、ない」


所詮は顔合わせ程度のもの。その後は特に話すこともなく、やがて二人は席を立ち、去っていった。


しかし帰路、彼らは顔見知りの人間と出くわす。


「あの、少しよろしいですか?」


それは叡子内親王であった。


「何ですか?」


「単刀直入に聞きます。お二人は一体、何者なのですか?」


「おや、まだその話を」


「やはり、いけないのですか?」


「いいえ、頭ごなしに否定する訳ではありません。内容によりますね」


クラミツハは意外にも拒否しなかった。ネサクの方も、顔は見えないが、少なくとも明確に反対はしていない。


「まず殿下は、どこまで知っているのですか?」


「貴女が人ではないということまでは知っています」


「なるほど。では、()()については?」


「知り、ません。何なのですか、それは」


クラミツハは一瞬だけ笑った。しかしそれが何を意味するのかは判らなかった。


「殿下も意外と、この世界の真実を知らされてはいないのですね」


「そ、そんなことは…」


「屍人の姫君のことも知らなければ、この世界を理解するのは不可能でしょう」


「屍人の、姫君?」


クラミツハの言葉は、内親王殿下にとっては全く未知の世界のそれであった。それが冗談なのか真実なのか、それすら判断出来なかった。


「ではまず、ここでの会話は絶対に口外しないこと。いいですね?」


「はい」


「とは言え、言いたいことはごく僅かです。しっかりと聞いていて下さい」


内親王殿下はゴクリと唾を飲み、静かに頷いた。


「人類の都市の外にも、私達のような意志を持った屍人が政府を作っている。その最高指導者こそ、屍人の姫君。しかし私達二人は、彼女に叛乱を起こし、人類にも屍人にも属さない存在なのです」


「貴女たちは、そのような……」


「いいですか。これは絶対に他言無用です。私達と会話を交わしたという事実すら、知られない方がいいです。ですから、私達はもう行きます。さようなら」


内親王殿下に別れの挨拶の暇すら与えず、二人は急くように遠くに消えた。しかし内親王殿下には、彼らの様子が悲しそうに見えた。


またその後は彼らのことは頭から消し、普段通りに職務に取り組むことにした。


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