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終末後記  作者: Takahiro
2-7_バイカル湖攻防戦
482/720

大本営にて

新章スタートです。

て思ってたんですけど見事に投稿時間を間違えてました。

崩壊暦215年2月27日15:23


ロッキー山脈陥落の報を受け、天皇臨席の大本営は次なる行動を決定しようとしている。それ即ち、イルクーツク湖上要塞の突破占領である。


因みに、五大湖湖上要塞の方は湖の名前が使われていたが、こちらでは都市の名が使われている。要塞が浮かぶ湖の名は、バイカル湖である。


今まさに鈴木大将が呼び出されんとしているのだが、ここで、ここまでの帝国の戦略を振り返ってみよう。


そもそも事の発端は、ソビエト共和国がその艦隊の多くを西に配置したことの始まる。理由は不明で、恐らくはヨーロッパ国への牽制であろうが、兎も角そういう事実があった。


従って、帝国軍はこの天佑を逃さまいとし、西方の艦隊の半分を東方に回し、一気呵成にロッキー山脈攻略を敢行し、成功させた。


ロッキー山脈を手にした以上、米軍の反撃を撃退することは容易である。よって、今度は東方の戦力を西方に回し、より確実な橋頭堡たりうるイルクーツク湖上要塞の奪取に乗り出す訳である。


伊藤中将は既に艦隊の抽出に同意した。もっとも、そもそも勝手に送り込んだ戦力なのだから、当然と言えば当然であるが。


「鈴木大将であります。まずは皆様こんにちは」


相変わらず人を見下したような鈴木大将がスクリーンに現れた。トレードマークの二角帽も変わらず被っている。


「ではまず、閣下をお呼びした理由から、説明します」


参謀総長の山本中将は言う。


「貴官が説明とは珍しいではないか」


「いや、偶には参謀総長らしい仕事もさせて頂きます」


「それが真っ当な話だな。続けてくれ」


補給の問題がほぼ存在せず、更には戦略という戦略もない(都市を落とす順番など数通りしかない)この時代では、参謀本部の役割は壊滅的に少ない。


かつての参謀本部の任務は、わずかに方面軍の旗艦の艦橋の中だけで完結してしまうのである。


結果、参謀本部というものは、内閣や華族や天皇と軍との取りもち役程度の存在に成り下がってしまった。


そんな虚しい存在の長たる山本中将が張り切るらしい。これは存分に応援すべき話であろう。まあ、何か特別なこともなく、これまでの会議の内容を要約しただけだったが。


「つまり、後は私の承認があれば、イルクーツク攻略が開始できると」


「はい。その通りです」


「では、ひとまず、計画自体は承認しよう」


「ありがとうございます」


鈴木大将としても、そうするべきだと思っていた。特に西方では、ソビエト共和国が再び体勢を整える前に前線を進めておきたい。加えて、大きな戦果を上げればアラブ連合も帝国に傾くだろうという打算もあった。


しかし、彼もタダで仕事を引き受ける訳にはいかない。帝国本土にも頑張ってもらわねば。


「その飛行艦隊戦力に加えて、いくらか、送って頂きたいものがあります」


「何でしょうか?」


「まずは、水上艦隊を2個ほど。また震洋を可能な限り沢山送って頂きたい。軍令部総長?それと、海軍大臣?」


まず水上艦隊に関しては、当然ながら陸軍の管轄するところではない。軍令部に許可を取る必要がある。


「それは如何なる目的でありますか?」


参謀総長よりは幾分か強い権限を持っている軍令部総長。彼は言う。それこそまず尋ねるべき質問だろう。


「一言で言うならば、そう、水上特攻ということになりますねぇ」


鈴木大将は不気味に微笑んだ。しかし軍令部としては黙っていられない。


「特攻とはつまり、我らの戦艦を犠牲にするということで宜しいか?」


「確かに損耗率が高くなるというのは、否めない。ですが、少しばかり語弊があるようです。特攻というのはつまり、的の湖上要塞に乗り込むことを指すのです」


「はあ、それならそうと仰って下さい」


「いや、わざとじゃないのですが……」


絶対にわざとだろう。鈴木大将に反省の色はなし。しかし、実際問題においては、会話に齟齬が生じることはなかった。


要は五大湖の再現が望まれているのだ。装甲が厚すぎて沈められない湖上要塞を無力化かするには、白兵戦によって内側から無力化するしかない。


「しかし、五大湖の戦闘から、敵軍の相当な攻撃が予想されますが?」


「だから、敵の想定を上回る戦力をぶつけて、強行突破しようとしているのですよ」


「なるほど……」


水上特攻と例えたのはなかなか的確だったと見える。犠牲を省みない突撃によって敵の対応力を飽和させ、白兵戦を強要しようというのだ。


そして、暫く考えた後、軍令部総長は決断した。


「わかりました。海軍を貸しましょう。どの道、海軍に活躍のどないでしょうから」


「感謝します。後は震洋についてですが……」


「それについては、陸軍で用意します」


山本中将は言った。


「わかった。では、問題ありません。作戦は完全に承認されました」


「はい。では、陛下、かくなる作戦のご裁可を」


最後には恒例の行事をせねばならない。山本中将は天皇に作戦の是非を問う。


「良い、イルクーツク要塞攻略作戦、直ちに準備に移れ」


「はっ」


かくして西部への攻勢が決定された。

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