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終末後記  作者: Takahiro
2-6_第三次ロッキー山脈攻防戦
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結末

「階段全てに地雷を設置せよ。爆破のタイミングは手動にし、未知なる敵部隊が接近し次第、これを殺す」


「りょ、了解です」


地雷とはいうものの、それは半径10cm程度の薄い円盤である。また地面ではなくとも、例えば壁にでも設置出来る。


また、全ての地雷はオンラインで管理され、オンオフの切り替えはもとより、時限爆弾としても運用出来るのだ。


「また、カメラは破壊されると予想されることより、音を頼りに爆破する。敵が使用すると思われる階段のみ、マイクをつけ、他は切れ」


今のところカメラは全て悉く破壊されている。しかし、まさか足音で存在を察知されるとは、敵も思わまい。例え想定していたとしても、マイクの位置は相当念入りに探さないと分からない。


そして、先程からずっと続く銃声、怒声は消滅した。誰もが思わず小声になってしまった。暫くは一切の静寂が続いたが、しかし、鋭い銃声が一発だけ響いた。


「閣下、カメラが!」


「分かっている。総員、静粛に」


銃声と同時にカメラが破壊された。敵が近づいている。ハーバー中将は耳をすました。


やがて、かつかつと床を蹴る音が聞こえた。それは、機動装甲服特有のそれ。間違いない。


「今だ!起爆!」


命令は忠実に実行される。ハーバー中将が声を発し、下士官がボタンを押し、コンマ数秒な間を開け、マイクごしに爆音が鳴った。同時にマイクも壊れた。


「警戒は続けさせよ。これで敵を殺せた保証はない」


奴らが死んだかの確認は、出来ない。今はまだ油断出来ない。ついに敵の攻撃がないと判断された時こそ、勝利を祝うべき時である。


機械的な戦闘が繰り返された。しかしそこにイレギュラーは現れない。


「閣下、既に、前回の攻撃間隔の4倍の時間が経過しています」


「勝ったか。だが、これは前線には伝えるな。敵を完全に殲滅するまでは、緊張感が切れてはならない」


ハーバー中将は勝利を確信した。絶対の確証はないが、恐らく、敵は既に死んでいるか重傷かだ。それに、もう屍人など脅威ではない。後は残党を狩るだけだ。


「ハーバー中将、アイオワは、勝ったのか?」


ニミッツ大将は言う。


「はい。我々は既にチェックメイトをかけました。後は、敵を滅ぼすのみです」


「おお、よくやった!」


「は?そこまで喜ぶべきことでしょうか?」


確かに一時は危なかったが、はたしてそこまでの大勝利だっただろうか。喜ぶべきは喜ぶべきであるのは否定しないが、違和感がある。


「実は、な……」


ニミッツ大将の表情は一瞬にして奈落に落ちた。喜びなど消え去っている。


「何か、私が知らぬ間に、ありましたか?」


「実は、ルイジアナとケンタッキーが既に敗北した」


「制圧されたのですね」


「ああ。不味いことになった」


他にも巡洋艦がいくつか制圧されたという。そして、その後も、各艦から多くの兵士が脱出していった。今のところ、艦橋の機器を片っ端から破壊することで艦を操作出来ないようにしているが、それも修理されたら終わりだ。


いずれ、これらの艦は敵になる。


「どうすべきだと思う?」


「撃沈するしかないでしょう。敵が動き出す前に、直ちに行動を開始しましょう」


「やはり、そう思うか」


奪還するのは非現実的だ。守るのさえ叶わないところ、奪い還せる筈はない。ならば、敵に使われる前に沈めるしかない。


「わかった。全艦、これより指定する艦を撃沈せよ」


そして各々の艦に破壊するべき艦が伝えられた。


「閣下!敵航空艦隊が接近!」


「くっ、ここで来るか。ミサイルは全て対空砲火に回せ!艦の方は、砲で破壊せよ!」


全体に混乱を生じる中での攻撃、なかなかたちが悪い。案の定、不完全な防空網は一部が破られ、少なからず空爆を受ける。


「全艦、撃ち方始め!」


その間、ルイジアナなどの艦に対する攻撃が始まる。しかし、動かない艦をこの至近距離で撃つのだ。数分と持たずに次々と墜落していった。


「敵艦隊、動き出しています!」


「全艦、砲撃戦用意!いや、砲撃開始!」


たちどころに敵の全面攻勢が始まった。これが万全の体制ならば砲弾の雨を浴びせられるのだが、どうしても()()に過ぎる。雨が敵の勢いに打ち消される。


「錨を下ろし山中に着陸!前回の策だ!急げ!」


前回の戦いで米軍に勝利をもたらした戦術。斜面に無理やり着陸し、山腹の敵を撃つそれだ。


錨が打ち込まれ、高度は落ちる。直ちに作戦は実行され、米艦隊の砲身は日本艦隊を正面に捉えた。


「全艦、撃て!撃ち続けろ!」


圧倒的な高度差で優位に立った米軍と、数にものいわせる日本軍。ここで押しきった方が勝利を掴む。

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