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終末後記  作者: Takahiro
2-6_第三次ロッキー山脈攻防戦
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アイオワ艦内の戦い

「何?狙撃されたのか?」


「そのようです!」


「全軍に警報。敵には有力な狙撃手が含まれている可能性があり」


「了解です」


こんなことで焦ってはいけないと、ハーバー中将は深呼吸をした。確かに想定外だが、所詮、一度の戦闘で何百人も死ぬうちの一人だ。


射手など、いくらでも代わりはいる。何なら、装填まで全て自動化されているこの時代、自動小銃を扱うより簡単ですらある。


「バリケードとなり得るものを全て防衛線まで運べ。特に、上層の防衛線は一部崩しても構わない」


塹壕戦のように、隠れれば撃たれない場所があると、安心感は段違いだろう。やはり人とは理詰めで動かないか故に、戦略的な非合理を甘受せざるを得ないだろう。


「それで、銃を持っている敵は見つからないのか?」


「それが、カメラが片っ端から破壊されており、確認出来ません」


「なるほど。ならば、仕方ないか」


艦内の状況を把握する手段というのは、殆ど用意されていない。まさかこの時代に白兵戦が起こるとは、誰も予想していなかったからだ。


しかしその時また凶報が来た。


「ハーバー中将、新手の敵だ。このまま乗り込んでくると思われる。警戒してくれ」


ニミッツ大将は言う。どうも、さっき大挙して襲ってきた車両の第二波が来たらしい。まだまだ在庫はあるらしい。決して芳しくはない事態である。


「閣下、何とか止めることは出来ますでしょうか?」


「そりゃ、努力はするが、さっきの調子からすると、完全には無理そうだ」


「承知しました。ならば、艦内で食い止めましょう」


「ああ。頼んだ」


そして、米艦隊はミサイルやら砲弾やらを浴びせた。もちろん、撃破出来たものはあった。全体の25%程度だが。そして残りはまた飛んできた。


「アイオワにも来ました!」


「焦らず、慎重に、確実に、敵を倒すように」


「了解です」


例え何千という敵兵が現れようと、それが同時に戦闘に参加出来る訳ではない。こちらは常に各個撃破を出来る立場にある。どうも敵には人間の兵士も混じっているようだな、少々の警戒があれば簡単に無力化出来る。


戦闘は一秒足りとも中断されることなく続いた。また戦線は膠着し続け、ついに突破を許していない。


「思っていたより余裕か?」


ハーバー中将は呟いた。本当に、負ける気配がしないのだ。


だが、その時不意に、一ヶ所からの映像が途絶えた。


「どうした?断線でも起こしたのか?」


「分かりません。調べます」


そして調べた結果、原因は現地のカメラにあると判断される。しかし、故障なのか破壊されたは判別出来ない。


「その防衛線の、ああ、ジャクソン大尉に通信して確かめよ」


順序を誤った気がするが、現地に直接通信して尋ねるのが一番だ。


「繋がりません」


だが通信が繋がらない。これは、何かがそこで起こっている。


もちろん、カメラと通信機が同時に故障する確率が0とは言わない。だが、軍用で故障の可能性が著しく低いそれらが同時に壊れるなど、あり得るだろうか。


「どうされますか?」


「ここは、防衛線が突破されたと見なし、全ての前線を後退させる。直ちにかかれ。また、念のため、命令は艦内放送、最大音量でも流せ」


「はっ」


分からない時は最悪の想定のもとに行動する。それで大したことがなければ、笑って済ませればいいのだ。


だが、笑ってはいられないらしい。二つの部隊は無事に上がってきた。しかし、例の部隊は、上がってこない。


「やはりか。直ちに予備部隊を投入し、傷を塞げ」


仕方あるまい。部隊は全滅したと見なし、次の部隊を投入する。また同時にバリケードの設営も急ぐ。


そして十と数分、屍人が現れた。また防衛線を張った場所以外では、カメラが次々と破壊されていく。さっきの状況がまた再現されようとしているのだ。


いつ、それが起こるか分からない。正体が分からないものには、対応のしようがない。つまりは、それに怯えつつ、目の前の敵を捌くしかない。


「来たか」


そして、今度はその瞬間を捉えることが出来た。一瞬で機関銃や人が吹き飛ばされ、爆煙がカメラの視界を多い尽くす。


「対戦車ミサイルの類いか。まさかここで使うとは……」


それは思ったより単純な手段だった。しかし、そうであるが故に、対抗策もまた乏しい。物陰から一瞬だけ体を出して撃たれなどしたら、どうしようもないのだ。


「これは、どうされますか?」


「くっ、もう一度、防衛線を後退させる。但し、次の小細工を仕掛ける」


ハーバー中将は、ものの数秒のうちに対抗策に思い至った。



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