表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末後記  作者: Takahiro
2-6_第三次ロッキー山脈攻防戦
466/720

リヤドにてⅧ

サブストーリーです。

その日、連合議会の議決が出た。


「議会は、ソビエトに対し友好的な政策を取るべし、と言っておりますぞ」


イランのムハンマド伯爵は言った。


そして、このご時世で「友好的」と言えば即ち、その側に立って宣戦せよということになる。事態はサッダーム首相不利に傾いてしまった。


「サッダーム首相、如何ですかな?」


「確かに、議会がそう言うのであれば、従うべきかもしれません」


「でしょうな」


「ですが、議会は連合軍に対して統帥権を持たないというのは、ご存知でしょう?」


「そうだが?……ほう、対日戦争は否認されると」


「その通りです」


軍の統帥権を持つのは、連合構成各国の首相で構成される連合中央会議である。議会はその決定に対し拒否権を持つが、それだけだ。それ以外で議会が軍に何かを命じることは出来ない。まあ一応、予算を使って脅しは出来るが。


「このままでは、何も出来ないではないか」


イラクのレザー王は言った。


「ええ。ですから、どちらかが妥協するか、或いはこのまま中立を貫くか。選ばねばなりません」


「しかし、中立はいけませんでしょう」


サウジアラビアのファイサル侯爵は言った。


「ええ。世界に取り残されます」


戦後、世界は戦勝国によって分割されるだろう。もしくは世界が一つの帝国に支配されるか。いずれにせよ、アラブ連合がそれに参画し、勢力を拡大しなければ、戦後の列強に食い物にされるだけだ。


少なくともこの認識は全員に共有されていた。


「ならば、勝てそうな側に味方するべきでは、ありませんかな?」


ムハンマド伯爵は言った。


それは対日戦を支持する理論である。ここでアラブ連合が全力で日本を攻撃すれば、日本はたちまちに崩壊するだろう。それは分かっている。


「確かに、戦勝国には入れましょう。しかし、戦後世界で我々が獲得出来る地位は、何とも微妙なものとなりましょう。それに、我々は、列強に敵いません」


まず、現実的なところとして、アラブ連合が東京を制圧するのは無理だろう。恐らく、ソビエト共和国に先を超される。


それに、最後の最後にちょっと働いただけの国を、列国が認めるだろうか。恐らくは、ヨーロッパ、アフリカ、ロシアの三国干渉でも起こり、土地など貰えないに決まっている。上手くいってインドとインドシナを貰えるくらいだろう。


「しかし、我々が日本に味方すれば、言い方が悪いですが、多くの血を日本に捧ぐことが出来ます。さすれば、日本との友好関係も築けると同時に、ソビエトのヨーロッパ大陸領土も頂けるでしょう」


サッダーム首相はあくまで対ソ参戦を支持する。確かに戦争は辛いが、戦後の利権はこちらの方が上であろうと。そしてそれこそが正常な国家の取るべき道であろうと。


だが、結局、この日も会議は紛糾し、結論は出なかった。


しかし、サッダーム首相には、一つ心に決めたことがあった。


「言論ではどうにもならない。ここは、武力でいこうじょないか。なあ、ユースフ元帥」


「左様に御座いましょう」


彼らの企みは始まった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ