ベルリンにてⅡ
サブストーリーです。
その日ベルリンを訪れたのは、ファンタジーの世界から抜け出してきたかのような奇怪な連中であった。全身を黒い外套で多い、感情も見せない者たち。
しかしその指導者の白い髪の少女だけは、他の人間と似てもつかない、よくしゃべる性格をしている。
彼らは国賓と同等の存在であり、もてなしたのはヘス総統自身である。
因みに白い髪の少女はドイツ語も喋れる。200年も生きていれば、わざわざ努力せずとも、この世界の主要四言語、つまりドイツ語、日本語、英語、ロシア語、は喋れるようになる。
「こんにちは。はじめまして。ヘス総統」
「こちらこそ、はじめまして」
些か身長差のある二人だが、少女はまったく怖じ気づかない。寧ろヘス総統の方が怯えていた程である。
「お呼びする時は、殿下、で宜しいのでしょうか?」
「はい。何でも構いません」
「では、殿下。まず殿下はどうしてここに来られたのですか?」
「簡単に言うと、アデナウアー大統領を見捨てるか否かを見極める為、来ました」
ヘス総統の顔が強ばった。それは即ちヨーロッパ国の運命を決める試金石であったのだ。
「ですが、聞きたいことは一つだけです。貴女は、この世界をどうしたいですか?」
それはあまりにも抽象的な質問だった。だがヘス総統がそれに口答えする出来る訳はなかった。また同時に、下手にお世辞を言うことも能わないと感じた。
「私は、人類がより幸福に生きる世界を望み、また実現しようと行動しています」
「では、この革命戦争は、その第一段階に過ぎないのですか?」
「それは分かりません。悪政を敷く政府があれば、人民の救済に向かう。それだけです」
ヘス総統の予想するところとしては、この戦争が終わった後に残るのは「善良な」政権のみである。アフリカとヨーロッパの衆愚は追放された。アメリカもまたクーデターでそれが実行されたし、日本がアメリカを占領しても、それはそれで善政が敷かれるだろう。
しかしそれらの政権が何らかの要因で破壊されたのなら、ヨーロッパ国は、国家社会主義ドイツ労働者党は、それを回復する為に出兵する。
「なるほど。理解しました。まあ、私がどう判断したかは、ここでは言いません。いずれ分かるでしょう」
「そ、そうですか」
少女は結局何の情報ももたらさなかった。ただヘス総統に問いを投げ掛けただけだった。後の会話も意味のない雑談だった。
そして、席を立った少女は最後にこう告げた。
「今、人類の間で渦巻いている思惑を、私たちは知っています。そして私たちはそれに反対するというのは、理解して下さいね」
そして会談は終了した。




