決死作戦Ⅲ
崩壊暦214年1月10日02:46
米艦隊と連合艦隊は、もはや半分以上が平行に並び、激しく砲火をまみえている。
数的には米艦隊が有利であるが、艦の性能では連合艦隊が上である為、戦いは拮抗している。
その戦局を動かすため、東郷大将は、次の段階への移行を指示する。
「近衛大佐、最大戦速でもって、敵艦隊の背後に回れ!」
「了解です!」
大和はその瞬間、無二の速度で前進し、敵の先端を横切っていく。
敵は、必死に主砲を回しているようだが、それも大和には追い付かない。軽い副砲やミサイルが攻撃してくるが、大和には効かないのだ。
「主砲、放て!」
東郷大将の号令とともに、6門の主砲が一斉に敵を狙い撃った。
敵の反対側から放たれた砲弾は、まず、先頭の、先ほど撃ち合っていた戦艦に命中し、その戦艦を傾かせる。
「そのまま前進!敵艦隊を撃滅せよ!」
大和は、勢いに任せ、敵の背後を突き進んでいく。
すぐに、大和は残された3門の主砲を、敵巡洋艦に放つ。
「敵巡洋艦、撃沈!」
巡洋艦は不運だったようだ。たちまちに艦の中央が爆発し、落下していく。しかし、そこで、凶報とも吉報ともとれる知らせが飛んできた。
「敵が大和に寄ってきています」
「何?ならば、東條中佐に攻撃を集中するよう伝えろ」
敵は何故か、大和以外の連合艦隊を忘れたように、大和を囲い込んできた。
しかし、それは、米艦隊が連合艦隊に囲まれるということも意味する。
大和を中心に、二重の弧が形作られる。
連合艦隊は、外側から米艦隊に砲火を浴びせ、なおも被害を強要していく。
「南西方向に進み、包囲を抜けろ」
東郷大将は、包囲網の一角に突撃し、それを打ち破るよう指示した。
「左舷被弾!」
「第5~7対空砲大破」
その時、ついに大和に砲弾が届いた。大和は、すぐに被害報告を伝える。
「その程度はどうとでもなる!このまま包囲を打通す!」
大和は、敵艦隊に突撃していく。敵艦隊は、砲弾、ミサイルを浴びせてくるが、それにも東郷は怯まない。
全速力の大和を沈められる艦は、米軍にはなかったのだ。
「砲火を前方に集中。そのまま味方と合流する」
大和は、敵の目前まで来た。
東條中佐の手腕か、タイミングよく、連合艦隊が大和の前方に砲火を集中し、砲弾の雨を降らせる。
大和は目前の巡洋艦を砲撃し、無力化すると、再び反対側に抜けていった。
「全艦に通達。このまま包囲網を狭め、敵を撃滅せよ」
大和に逃げられ、意味を失った米艦隊の陣形に、連合艦隊は襲い掛かる。
もはや、勝負は決した。
米艦隊の外側から、連合艦隊の弧は狭められ、次々と砲弾の雨を降らせる。
交差する砲火の前に、米艦隊にはなすすべはない。
「敵、潰走します」
すぐに、米艦隊は、包囲網から逃げ出した。ただ、未だに組織的戦闘力は残しているようだ。
「第三艦隊より、カルガリー上空に到着の知らせです」
そして、ちょうどその時、暫し足止めされていた第三艦隊も、カルガリーにたどり着いた。カルガリーは落ちただろう。作戦は成功だ。
「カルガリー上空で、敵艦隊を待ち受けるように伝えろ。敵艦隊を挟撃する。連合艦隊は、追撃だ」
逃げる敵を、大和は追う。ここまま行けば、カルガリーの第三艦隊と挟み撃ちができる。
もはや、誰の目にも、日本軍の勝利は明白だった。




