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終末後記  作者: Takahiro
1-2_ロッキー山脈攻防戦
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モスクワにてⅡ

時は、ロッキー山脈陥落の直後である。


ソビエト共和国首都モスクワ中心部のクレムリンの中では、ジュガシヴィリ書記長を中心に、今後の方策が練られていた。


「これで、日米の早期講話の線はなくなったな」


ジュガシヴィリ書記長は、深刻そうに話を切り出した。


「はい。ロッキー山脈を日本が手にした今、戦争の終結は難しいでしょう。戦争は、消耗戦を呈することと思われます」


ジューコフ少将は、冷静に戦況を分析した。


現在、日本軍にはロッキー山脈、米軍には五大湖要塞があり、例え艦隊が殲滅されても、戦線を支えることは可能なのだ。


そこで、ソビエト共和国が片側に参戦すれば、シベリアからアメリカ連邦に襲いかかる、もしくは朝鮮半島から大日本帝国に襲いかかるかのどちらかで、戦況を一気に動かせる。


ソビエト共和国は、日米双方の国境と同時に接する唯一の国家であるのだ。


「そうなると、我が国が味方した側が勝つという公算が高いな」


「そうですね。そうなると、私としては、日本に味方した後に、東郷大将の計画に乗る、3号計画が最善と考えます。日米の影響力を同時に抑えられますから」


「しかし、西に欧州合衆国、南にアラブ連合がいるなかで、我が国が戦争を起こせば、安全保証が危機に晒されるのではないか?」


ソビエト共和国は、単独の国力ではアメリカ連邦に匹敵するものを持っているが、欧州合衆国とアラブ連合が協力してくると、防衛は困難となるのは必至である。


その状況で、新たに戦争を始めるのは危険だ。


「ならば、我が『キエフ』にお任せ下さい」


そう言ったのは、如何にも剛力の男といった風貌の将軍である。


「しかし、ロコソフスキー少将、キエフはまだ修復途中ではなかったのか?」


「確かに、修復途中ではあります。しかし、その全力を出せないというだけで、既にキエフは、共和国最強の艦であります」


「ふむ、ロコソフスキー少将がそういうのなら、そうなのでしょう。キエフを隣国への抑止力とすれば、戦争も起こせます」


「なるほどな。しかし、キエフ用のミサイルの準備は整っているのか?」


「マレンコフ大佐、どうだ?」


ジュガシヴィリ書記長は、キエフの根幹となる装備について尋ねた。


「既に、我が技術研究所は、今すぐにでも使える用意をしてあります」


「ならば、キエフは使えるな。よし、大まかには、この方針でいこう」


ジュガシヴィリ書記長は、決定を下した。ソビエト共和国の今後は、この会議の決定に沿っていくだろう。


彼らの会議はまだ続く。


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