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終末後記  作者: Takahiro
1-2_ロッキー山脈攻防戦
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決死作戦Ⅱ

崩壊暦214年1月10日02:11


「単縦陣を組め。狙うは大和のみだ」


チャールズ元帥は全艦を一列に並べる単縦陣をとるよう指示する。正確には、駆逐艦は列より少しずらして配置されるが。


そして、艦隊の側面を全て敵に向け、砲撃を集中させる計画だ。


単縦陣というのは、中世からの海軍がよく用いた陣形であり、21世紀からは忘れ去られていたが、空軍の脅威が対空ミサイルの進歩で薄れたこの時代になって、再び日の目を見たのだ。


「航空艦隊は、敵に航空優勢を確保させるな。それさえすれば、十分だ」


現在、米艦隊の航空戦力は優位である。しかし、圧倒的な優位である訳でもない。


チャールズ元帥は、堅実な策をとり、上空から攻撃されるリスクを低減することを選ぶ。


そして、艦内に緊張が張りつめる中、艦隊は進んでいく。


「閣下、敵も単縦陣をとるようです。そして、これは、大和を狙う我々にとっては好都合でありましょう」


日本軍は、その陣形を徐々に崩し始めた。


ハーバー中将は、接近に伴う日本軍の動きを、単縦陣をとろうとしているものだと察知する。


単縦陣は、砲撃戦に強い陣形であり、総合的にはチャールズ元帥は不利になるが、少なくとも大和は狙いやすい位置に来る。


「そうだな。作戦はこのままで攻撃する」


距離はおよそ35kmである。

 

「まもなく、ケラウノスが届きます」


カルガリーの東500kmの都市、サスカトゥーンからのケラウノス攻撃がここに届いたとの知らせが届く。


およそ40分をかけて、ミサイルは日本艦隊にたどり着いた。


無数の光の筋が、日本艦隊に襲いかかる。


「敵戦隊、停止しました」


「よし。ひとまずは安心だな」


敵は、迎撃の為、その場を動けなくなっている。大した被害は与えられてはいないが、敵が止まったならそれで十分だ。その間に、敵の片側を殲滅すればよいのだ。


「間もなく主砲の射程まで1kmです」


「敵の東端に向かって突撃。砲火を大和に集中させろ」


現在、日本艦隊と米艦隊は離れているが、垂直な単縦陣を互いにしいている。このまま米艦隊が前進すれば、見事なT字を作り出し、めでたく日本軍に殲滅されるだろう。


故に、敵の東端、即ち大和がいる端に向かって突撃し、両軍でV字を作り出し、大和を撃沈する作戦が立案された。


V字を作ろうとする段階で、敵からの砲火は避けられないが、それは覚悟の上である。


「全艦、前進!」


米艦隊は、敵に対して斜めに前進を始める。


「敵艦隊、射程に入りました」


「撃て!」


米艦隊の主砲が、一斉に火を吹く。


「敵、発砲!」


同時に日本艦隊も砲火を浴びせてくる。


砲火を交えながら、両軍は接近していく。


「シカゴ被弾!」


「止まるな!大和までたどり着くんだ!」


止まっている日本艦隊の命中率は、比較的高い。戦線を脱落する艦も出るが、チャールズ元帥は止まらない。


「進め!進め!」


「敵巡洋艦、撃沈!」


両軍は、既に数キロの距離まで接近している。だが、そこでついに日本軍が腰を上げる。


「閣下、日本軍が動き始めました。恐らくは、我々に横付けするつもりであるかと」


ハーバー中将は、冷静な分析を告げる。


ほどなくして、日本軍は、米艦隊と同じ軌道を描いて陣形を曲げ始めた。


「全艦、現在の軌道を進み、全主砲を大和に向けろ!」


チャールズ元帥は、数の力でのごり押しをする腹だ。両艦隊が平行に並べば、米艦隊の方が有利である。


そして、アイオワと大和は、単縦陣の先端として、合間見えることになる。


「ミズーリ轟沈!」


「まだだ!全艦、撃ち続けろ!」


米艦隊の戦艦、ミズーリが沈んだ。しかし、チャールズ元帥は怯まない。地上で燃えるミズーリを見下ろしながら、大和に攻撃を続ける。


すぐに、朗報が届いた。


「大和右舷に命中しました!」


ついに、アイオワが大和に砲弾を撃ち込んだのだ。大和は少し揺れ、煙を上げている。


日本軍、米軍ともに多数の艦が地上に落ちていく。しかし、沈んだ艦の数は、米軍の方が多い。


そして、大和の次には、アイオワにも砲弾は届いた。


「くっ!」


アイオワが激しく揺れる。幸いにもまだ浮いているが、被害は甚大なようだ。


「第一主砲塔被弾!」


アイオワは、3つの主砲塔のうち、1つを失った。しかし、まだ沈んではいない。


「全艦に、アイオワに近づくよう命じろ。大和を砲弾で押し潰す」


なおもチャールズ元帥は戦い続ける。数の力で押し潰してやるのだ。


陣形は前進し、大和に砲火を集中していく。


「よし。このまま行けば、大和だけは落とせるな」


戦いの勝利は捨てたが、大和の撃沈は確実かと思われた。


しかし、ことはそう上手く運ばない。


「大和が動き出しました!ご、57ノットで動いています!」


「57、だと。」


57ノットとは、この時代の戦艦の平均速度に倍するものだ。


チャールズ元帥は、まだ、大和の真価を知らない。ついに、全力を発揮した大和が、米艦隊に牙を剥いた。



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