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終末後記  作者: Takahiro
2-5_バトル・オブ・ブリテン
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想定外の友

崩壊暦215年1月12日02:12


時は、ニューヨークでの一件から数日だけ遡る。ロッキー山脈攻防戦で米軍の勝利が確定した、ほんの数時間後の事だった。


ベルリン中央空港に突如として予定にない便が来訪し、自らをアメリカ連邦の特使と名乗った。流石にこれを撃ち落とす訳にもいかず、何とか滑走路を確保した。


そして、厳戒態勢の中、タラップを下ってきたのは、二人のアメリカ軍人とその護衛であった。何故二人とその護衛かと判断出来たかというと、その制服から彼らが高位の将校であることは判ったからだ。


そして彼らはそれぞれ、海軍大将マーシャルと陸軍少将アイゼンハワーと名乗った。事実相当な高官であったのだ。彼らは軍参謀本部に赴きたいと求め、軍はそれを承認した。


そして彼らが向かった先には、陸軍上級大将ゲッベルス、同ド・ゴールが待ち構えていた。ここは軍人だけの世界、礼儀に拘ることはない。最低限の挨拶を済ませた後、双方は相対した。


「それで、何の用があって、ここに来られたのですか?」


知能は高いが常々人をからかわなければ生きていけない男、ゲッベルス上級大将は言う。


「我々の目的はただ一つ。イングランド排除の為、貴国との協力関係を結びに来ました」


機械のような男、アイゼンハワー少将は答える。


「ほう。具体的には何をしろとおっしゃるのかな?」


老将軍、ド・ゴール上級大将は更に問う。


「イングランド侵攻です。既に大陸をほぼ平定した貴国軍ならば、可能ではないでしょうか」


「確かに。可能ではある。だが、それを実行するかは、君の話をよく聞かないとわからないな」


「もっともです」


現状、ヨーロッパで国家社会主義ヨーロッパ労働者党に仇なす国家は二つのみ、即ちイングランドとギリシャである。このうちギリシャは弱体であって、2個艦隊を防衛用に充てておけば、問題はない。ただ問題はイングランドで、5個艦隊をドーバー海峡対岸に集結させているが、相手も4個艦隊を持ち、また地の利もある為、なかなか決着がつけられていなかった。


因みにこの情報はアイゼンハワー少将が秘密裏に収集したものである。


「では、どういうつもりでいるのか、話してもらおうか?」


「はい」


そしてアイゼンハワー少将が語り出したのは、例のプランである。つまり、アメリカ飛行艦隊は囮として敵の飛行艦隊を北部に誘い出し、アメリカ水上艦隊、ヨーロッパ国軍全てでロンドンに総攻撃を仕掛けるというものだ。


「なるほど。悪くない、いや、良い策だ。だが、圧倒的な戦力差に驕って油断はするな」


「と、言いますと?」


マーシャル海軍大将は尋ねる。何をこれ以上心配することがあろうかと。


「特に水上艦隊の話だ。欧州合衆国の海軍は、殆どが、イングランドのものだ。その方が効率良かったからな。つまり、海軍だけを見れば、イングランドのそれは欧州合衆国解体前のそれと変わらんのだよ」


「肝に銘じておきましょう。しかし、圧倒的な制空権があれば、水上艦隊とて恐るるに足らないのではないでしょうか?」


空を制した者は、戦争を制する者だ。両軍の戦力差を鑑みるに、NS飛行艦隊は上空から水面を自由に砲撃出来るだろう。そして、はっきり言って水上艦隊が飛行艦隊に抗うのは不可能だ。よって、水上艦隊同士の戦いの前に、まず敵水上艦隊は壊滅していることだろう。


「ああ。普通に考えてもそうだし、兵法書を読んで考えてもそうなる。だが、奴らは一千年の歴史を持つロイヤルネイビー、そう易々と負けを認めるとは、思わん方がいいな」


「そう、ですか」


何の合理性もない警句だ。本来のマーシャル大将なら、表面上は受け入れつつも、内心では即刻に忘れ去るだろう。だが、この老将軍の警告は、どうしてだが忘れることが出来なかった。


「それと、これは二人に言うもんだが、ロンドンという都市を甘く見てはならん。あの都市は、ハリネズミが可愛く思えるくらいに武装されているんだ。私もその詳細は知らないが、何となくはわかる」


「ほう。それはどのような所以で、でしょうか?」


「私は、こんな老いた体からわかるだろうが、君達の何倍もの時間を生きてきた。そして、ロンドンが今まさに要塞化されている、というのを、若い時に見た。そいつは、執念深いまでのもんだった。あらゆる場所に砲台が隠されている。海岸は特にだ。それに、ボタンひとつで起動する地雷原が、街のあちこちに仕掛けてある。それに、そこら中の地下が核シェルター並みの強度を誇っている」


「それは、また……」


本当だとしたら、末恐ろしい都市だ、ロンドンというのは。これは確かに警告すべきだろう。





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