外交的孤立
投稿忘れしてまして猛烈に申し訳ありません。
崩壊暦215年1月14日07:13
ホワイトハウスに届いた報に、皆々はアメリカ連邦の命運が尽きかけていると悟った。
「みんな、知っていると思うが、つい先日、グレートブリテン島に日本軍が降りたとの報せがあった。つまり、どういうことかわかるな」
チャールズ元帥はあえて淡々と言った。
誰も口にはしなかったが、つまるところ、欧州合衆国は完全に日本についたということだ。あの二枚舌野郎、自分らの利益の為ならば本当に何でもする。どうも、欧州合衆国というのはドイツの剛健さと連合王国の紳士精神を受け継いだようだ。実に素晴らしい国家だ。
「これで、現状、我々は世界から孤立したな」
「しかし、閣下、ソビエト共和国は味方ではないのですか?」
「最早あの国との連絡手段は失われた。ああ、多分誤解されたが、そういう意味で言ったんだ」
「なるほど。失礼しました」
ソビエト共和国はバイカル湖まで前線を下げることを選んだ。まあ、例え両国が接していても互いに援助をする余裕すらないからどうでもいいのだが、やはり、見渡す限り敵だらけというのは精神的に苦しいものがある。
「アフリカ連邦共和国は、未だ明確に敵対した訳ではないのでは?」
「確かにそうだが、日本軍を無傷で通した時点で、とても我々に好意的とは思えない。それに、あんなオスマン帝国並みの瀕死の病人では、力にはならないだろうな」
「そう、ですね」
弱りきっているアフリカ連邦共和国が味方になったところで、何も出来まい。現在ですら体制の維持にやっとなのだ。いざとなれば欧州合衆国の一個艦隊にも滅ぼされそうである。
「と、絶望ムードを作ったところで、だが我々にはまだ味方が出来るかもしれないだろう?」
「はい。私から説明しましょう」
ここでアイゼンハワー少将が立ち上がる。ここからは、チャールズ元帥が仕組んだサプライズである。
「まず、唯一有力な我々の味方は、ヨーロッパ国、ナチス・ヨーロッパです」
「奴らと、同盟などするのか?」
ナチスと言えば、アメリカの宿敵である。世界的にナチス(かつて存在したドイツの政党の方は)の再評価が進み、反対にアメリカの評価は下落するばかり。今でも反米のシンボルと言えばナチスのハーケンクロイツである。それが、そんな奴の名をついだ連中と結託するとは、大半の者にとっては考え難いことである。
「はい。この現状を打破したくば、彼らしか頼りはありません」
「それで、ナチスの方を支援し、ヨーロッパ内戦で勝たせると?」
「いいえ」
「いいえ?」
「我々は、今暫し余裕があるであろう陸軍を動員し、グレートブリテン島を攻撃します」
「何だと?」
「そ、そうだ、バカなことを言うな」
アイゼンハワー少将があまりにも黙々と続けるものであったから、将軍、佐官、尉官問わず、飛来した衝撃は巨大である。
アイゼンハワー少将とチャールズ元帥の出した結論は、大西洋の脅威の排除である。欧州合衆国さえ潰してしまえば、大西洋に兵力を割く必要がないどころか、ヨーロッパ国が大日本帝国との戦争に乗り出してくれる可能性もある。
そうなれば、第三戦線を抱える余裕のない日本軍は瓦解する筈だ。今の日本軍はほぼ全ての戦力を東西どちらかに配分し、予備戦力は払底している。ヨーロッパを制することは即ち世界を制することである。
「何を言っているのですか。これが最も合理的な戦略です」
「それはそうかもしれんがな……」
「それならば、問題はないということで宜しいですね?」
「い、いや、そもそも、勝算はあるのか?」
それは当然の疑問である。戦線に余裕が出来たから引き抜いた艦隊どころで、内戦中とは言え一国を滅ぼせようか。大いに疑問が残る。
「もちろん、勝算があるからこのような提案をしているのです」
「ならば、詳細な説明を、お願い出来ますか?」
「もちろんです。しかしここは、チャールズ元帥閣下から説明された方が、説得力があるかと思います」
「ん?私か?」
チャールズ元帥にとっては聞いていない展開だ。とは言え、元帥自身も作戦の起草者、もちろん作戦は把握している。
「わかった。私から説明しよう」
チャールズ元帥は話し始めた。




