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終末後記  作者: Takahiro
2-4_第二次ロッキー山脈攻防戦
403/720

完全勝利

「撃て撃て!一隻足りとも逃がすな!」


「閣下、もう少し落ち着けないものでしょうか?」


「まったく、こんな状況で落ち着いてるのはお前くらいだぞ」


「そうですか。では、ご自由にどうぞ」


「おう」


この時ばかりはニミッツ大将の方が的確であった。回りを見ればハーバー中将以外の誰しもが興奮気味に報告を飛ばしてくる。それもほぼ全てが撃沈の報である。


「敵戦艦陸奥撃沈!」


「おお!良くやった!」


「敵駆逐艦3隻撃沈!」


「いいぞ!そのまま!」


敵艦撃沈の報告が鳴りやまない。それ以外の報告と言えば、巡洋艦デトロイトが故障しました、くらい。敵からの砲撃も届かない。最高の状況である。


だが、敵も馬鹿ではない。すぐに撤退を始めた。もちろん米艦隊は砲撃は継続する。ここから30kmは米艦隊の射程の内なのだ。もしニミッツ大将が向こうにいたら、思わず無条件降伏してしまうだろう。


「閣下、深追いはしなくていいでしょう。このままここで砲撃を続けましょう」


「追わないのか?」


ニミッツ大将は追い討ちを掛けたいようだ。確かに、この状況ならば日本軍を徹底的に叩きたいというのも分かる。だがハーバー中将はここに至っても冷静である。


「このまま追って、互いに同じ高度になれば、敵が何をしてくるかわかりません」


「だが、奴等に我々と戦う余力はないだろう」


「最悪、相討ちに持ち込まれる可能性があります。もし日本軍が艦隊を総動員して特攻でも仕掛けてくれば、我々にそれを防ぐ手だてはありません」


日本軍がこの選択肢を取るのは、あり得ない話ではない。例え日本の東方艦隊が壊滅したとしても、米軍も壊滅していれば、何ら問題はないのである。アラブ連合がここで日本を攻撃するとは、少し考えにくいからだ。


一方のアメリカ連邦はどうだ?南には信頼関係皆無の人々、大西洋を越えれば何だか良く分からないファシストが多数。アメリカ連邦の軍備が壊滅したと知れば、こぞって襲ってくるに違いない。


日米の完全なる一対一ならいいんだが、世界は一つであるが故に、米軍は常に一定の規模の軍隊を持たねばならない。


そういう訳で、米軍はどうしても安全策を取らざるを得ない。


今思えば、前線に全戦力を投入しなかったルーズベルト大統領の判断も、ある程度は正しかったのだと思えてくる。国より保身が大事な男だったが、少なくとも国が滅びないようにはしていたらしい。


まあ、味方してくれる国があれば何処でもいいようだが。


「わかった。だったら、ここで狩りを楽しもうじゃないか」


「はい。そうしましょう」


しかし、そんな余裕綽々の面々にも緊張が走る事態が訪れた。


「閣下!敵特攻艇、確認しました!」


「やっと来たか」


ついに、あの悪魔の兵器が来た。しかし彼はまだ余裕である。この為にサンフランシスコを火の海にしたのだ。


「砲撃は敵艦隊に対し継続。ミサイルはありったけ迎撃に回せ」


「了解!」


まずはセオリー通りミサイルで迎撃。しかし知っての通り、あれは墜ちない。


「敵、続々と防衛網を突破」


「ああ。まだまだ、大丈夫さ……」


さしものニミッツ大将も背中に冷たい汗をかいてきた。無意識なのか、手も強く握りしめている。


「敵、我が艦隊に接触!」


「よし、今だ!リアクティブ・アーマー起動せよ!!」


その刹那、今まさに尖兵を放たんとしていた機体が彼方に吹き飛ばされた。いくら敵機が乗り移ろうとも、全て吹き飛んでいく。あるものは前方に、あるものは後方に、憐れにもロッキー山脈をずり落ちていった。


「成功、だな」


「はい。成功と言えるでしょう。リアクティブ・アーマー、取り付けに1ヶ月かかりましたが、効果はそれに見合いましょう」


リアクティブ・アーマーとは、日本語に訳すところの爆発反応装甲である。本来は成形炸薬弾に対する防御なのだが、今回のこれは性質が全く違う。


即ち、甲板に強力な指向性爆薬を複数設置、それを敵の来襲と同時に爆破し、乗り移る暇も与えず吹き飛ばすのだ。もちろん数に限りはあるが、ついにそれを超える敵機は現れなかった。


「閣下!あれを取り払えていない艦が2隻あります!」


「2隻か。その程度は想定内だ。至急援軍を送り、すぐさまゾンビどもを排除せよ」


「了解!」


多少の不具合は想定内。その為に地上部隊も沢山用意してきた。件の2隻の周囲には次々とヘリコプターが降り立ち、完全武装の増援部隊を送り込んでいく。


「敵も諦めたようですね」


「ああ、流石の奴らも怖じ気づいたな」


日本軍は逃走、ここに、米軍の勝利は確定した。


めちゃめちゃ一瞬で終わりましたね。

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