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終末後記  作者: Takahiro
2-3_極東の戦い
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オホーツクの戦い

崩壊暦214年12月30日23:01


その頃、戦艦ソビエツカヤ・ロシア上にジューコフ大将はいる。現在彼は北側の艦隊に加わっているが、そこ自体の指揮は他の将軍に任せてある。


そして、ジューコフ大将にもあの情報は伝わっている。味方ごと敵を吹き飛ばすというジューコフ大将らしからぬ作戦を使ってまでも、日本軍はしぶとく生き延びているというのだ。


理由は恐らく、この絨毯爆撃に穴があったからだろう。切羽詰まっていたとは言え、これで敵を粉砕出来ると考えた方が馬鹿だった。


相手が意図していたかは分からないが、そういう意味では、心理戦は日本軍の勝利だ。


「それで、上陸してきたと敵の数は?」


ジューコフ大将は尋ねる。


「判然としませんが、およそ2個大隊程度かと思われます。また、戦車や装甲車も確認できます」


「1000くらいか。それに比べて、オホーツク守備隊は3000。地の利もある。大きなヘマをしない限り、負けないか」


普通に考えて負ける訳がない。兵力が3倍というのもさることながら、攻城戦は防御側が圧倒的に有利だからである。そんなことはわざわざ考えなくても自明だろう。


「敵の狙いはまず基地だろう」


オホーツクの中央から若干北に寄った場所に、都市で最大のオホーツク基地がある。後は砲台が点々としているが、それは都市の制圧とは関係ない。また、レジスタンスのような組織は当然存在せず、警察に特別な組織もない。よって、敵はオホーツク基地ただ一点を目指してくると考えられる。


「基地の周りに防衛線を張るか。基地から数km離れた辺りに、半円形に防衛線を作らせてくれ」


「そ、そんな適当なご命令で大丈夫なのですか?」


「ああ。負けはしないさ。少し、考えたいことがあってな」


「そ、そうですか」


ここでジューコフ大将が考え出した、いやずっと前から考えていたことは、他に何もないだろうが、オホーツクの命運についてである。


現状、ここ北側艦隊の戦闘は、両者共に犠牲を厭い続け、一歩も何も進まない状態だ。それはつまり、貴重極まる2個艦隊が拘束され続けることを意味する。


また、オホーツクでの地上戦を制したとしても、日本軍は飛行艦隊にものを言わせ、オホーツクを落とすだろう。同じ飛行艦隊の来援がない限り、オホーツクの運命は決まりきっている。


ならば、取るべき行動は、目の前の艦隊を倒し、オホーツクの救援に向かうことである。決して不可能な話ではない。だが、もしもオホーツクが地上戦の時点で陥落した場合、そこで払った損害は完全に無駄となる。ソビエト軍はただ撤退するしかないからだ。


つまり、オホーツクで決着がつくまでは、現状維持が最適ということだ。負けた場合、最小の犠牲で戦闘を終える為に。


日本軍も恐らく、同じことを望んでいる。オホーツクを落とせばソビエト軍が撤退してくれると踏んでいるからだ。日本軍もまた、無駄な犠牲を望んでいない。


「ならば、北艦隊は放置していても問題ない……私が注視すべきは、やはりオホーツクか……それとも、醜い内政か……」


オホーツクの勝敗は、究極的にはどちらでもいい。結果を早急に聞ければいいだけだ。ならば、彼の仕事は戦略次元の話に移行する。


「オホーツクの状況は常に監視し、少しでも動きがあり次第、随時報告するように」


それが彼の出せる唯一の命令であった。


「そしてだが、みんなは今、はっきり言って暇だろう?ああ、もちろん、オホーツクを監視する役目は引き続き行い、これからの話は無視してくれて構わない」


数名の士官だけがモニターに張り付く。だが、残りの者はおよそ暇なのである。今、ソビエツキー・ソユーズはどこの指揮もしていないのだ。


「単刀直入に言うと、私はこの戦い、負ける可能性の方が高いと思っている」


と、ジューコフ大将は切り出した。



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