リヤドにてⅣ
サブストーリーです。
サッダーム首相はその日、リヤドに舞い戻って来た。時に、崩壊暦214年も終わろうとしていた。
「ファイサル侯爵、時に、例のものは持ってこられましたか?」
「勿論。このデバイスの中に、全てが入っている」
二人は悪魔的な笑みを浮かべあった。だがそれは隠し、連合王宮の大会議場へと向かった。二人が狙いを定めたのはサウジアラビア国王、既に関係者には根回しを済ませてある。
サウード王は例のように儀礼的な開会宣言を発し初めた。しかし、突如として、サッダームが声を上げた。
「恐れながら、陛下。そして、ここにお集まりの皆さん、私めに少々見せたいものがあります」
「は?何を言うか、サッダーム首相?」
「まあまあ、ひとまずこれを見て下さい」
サッダーム首相はデバイスのデータをさっと全員に送った。途端、サウード王はわなわなと震えだした。
「な、これは、何という。本当なのですか!?ソビエト共和国と内通していたとは!陛下!?」
ここで叫んだは、これを仕組んだ張本人のファイサル侯爵であった。何ともまあ上手な演技である。
そして、この日ファイサル侯爵が用意したスキャンダルとは、サウード王即ちサウジアラビアとソビエト共和国が密かに内乱を企てていたという情報である。
「何を言う!サッダーム首相!無礼にもほどがあろう!」
「無礼?陛下こそ、連合への反逆罪を犯されて、よくもそのようなことを」
「反逆罪だと!?」
「ああ、疑わしきは罰せずと。なるほど、証拠をお見せしましょう。衛兵」
サッダーム首相は少し離れた衛兵を呼び寄せた。彼は事情を察したようで、すぐに、数人の虜囚を連れて戻ってきた。
「なっ、何だ?」
「陛下、彼らは皆、ソビエト共和国が我が国に送り込んだスパイ、いいえ、陛下こそが招き入れた者共です。しっかりと、そう証言してくれました。証拠は十分ですよね」
答えに窮した王は黙りこんだ。しかし、ウマル師とレザー王、ファイサル侯も次々にサウジアラビア王を非難した。終いには、イランのムハンマド伯爵も声を揃えた。何という手の平返し。
「な、わ、私はどう、なると……」
サウード王は心底怯えていた。
「大丈夫です。まさか、命までは取りません」
別段、王個人に恨みがある訳ではない。サッダーム首相も流石に可哀想になってきたのだ。
「陛下には、その地位を明け渡し、以後は何処かの都市で静かに暮らして頂きます。年金は出しますのでご安心下さい」
かくして、宮廷クーデターは一瞬にして無血に終わった。




