欺瞞作戦
今回とは全然関係無いんですけど、友人に、ローファンタジーじゃなくね、って言われたんですけど、ちゃんとローファンタジーなのでご安心下さい。
崩壊暦214年1月9日12:45
チャールズ元帥は、ロッキー山脈の山影のアイオワにて、その艦隊の指揮を執っている。
「全艦、全力で迎撃せよ!」
襲い掛かった日本軍に対し、山脈に張り付いた艦隊は一斉に砲門を開く。
チャールズ元帥渾身の作戦、それは山脈に飛行戦艦を着艦させておき、もとからあった砲台に加え、更に強固な陣地を作り上げることだ。
飛行戦艦には、昔ながらの光学迷彩に加え、レーダーを誤魔化すようにステルス迷彩が施されており、敵からはまず見えない。
日本軍は、砲台を増設したと勘違いしたが、その正体は隠された飛行戦艦である。
「よし、いいぞ。全艦、攻撃の手を緩めるな」
血気盛んにやって来た日本航空艦隊は、今や散り散りになっている。このまま行けば、じきに撤退するだろう。
そして、日本軍は砲撃戦にもちこんで来るはずだ。そこで、高高度より、砲弾の雨を降らせるのが、チャールズ元帥の作戦だ。
「退いたな」
敵航空艦隊は、鳩に豆鉄砲を当てたように、逃げ帰っていった。
「敵艦隊が動き始めました」
そして、作戦通り、日本艦隊はのこのことやって来た。
「閣下、限界まで敵を引き付けるのが肝要です。くれぐれも、焦らずに」
「わかっている」
ハーバー中将は、チャールズ元帥の頼れる副官だ。常に冷静さを欠かせない。
「敵、発砲を確認」
敵もやはり慎重なようだ。猪突猛進な突撃はしてこない。
「全艦、くれぐれも、砲台のように振る舞え」
まだ、米艦隊は動かない。
「ケンタッキーに被弾しました!」
「まだだ。もっと引き付けろ」
ついに敵の砲弾が戦隊に届く。やはり、日本軍の艦砲は強く、射程も長い。
「全砲台の射程内に、敵が入りました」
「よし、今だ!全艦、離陸せよ!」
その瞬間、数十の砲台が、唐突に浮かび出す。敵からしたら、青天の霹靂だろう。
「よし、日本軍を爆撃する。こちらが上に居るんだ。負けることはない!」
米艦隊は、現在、日本艦隊より遥かに高い位置に浮いている。
通常、地上からこの高度に上がるのには非常に時間がかかる。だが、山から離陸した米艦隊は、既に日本艦隊の上にいるのだ。
そして、米艦隊は日本艦隊に砲弾の雨を降らせる。
敵も反撃してくるが、高度差は、米艦隊に圧倒的な優位を与える。
「敵駆逐艦撃沈!」
「よし!いけるぞ!撃ちまくれ!」
日本艦隊の各所から、火の手が上がっている。砲撃は効果覿面そのものだ。
上から落とした砲弾は強い。対して、下から打ち上げた砲弾は弱い。
サンフランシスコで確かめられた戦訓をチャールズ元帥は忘れない。今こそは、捲土重来の時であった。
「敵、航空艦隊襲来!」
さすがに敵も黙ってはいない。素早く上昇できる戦闘攻撃機をけしかけてきた。
「こちらも出撃させろ」
ロッキー山脈から、日本航空艦隊を凌駕する戦闘攻撃機が飛び立った。その数はおよそ500。サンフランシスコから逃げ延びたものと、本国からの増援を併せた大部隊だ。
大部隊は、日本航空艦隊に襲いかかる。もはや、敵が脅威になることはないだろう。
「敵航空艦隊、撤退します」
一瞬砲火を交えると、日本航空艦隊は、踵を返し逃げ去った。
「閣下、追撃はさせない方が良いでしょう。戦闘攻撃機には、艦隊の直掩を任せ、我々は爆撃を続けるのです」
「そうだな。戦闘攻撃機には、艦隊の守りを任せる」
戦闘の経過は、米艦隊の有利に進む。もはや、日本艦隊に打つ手なしと誰もが思った。
「敵艦隊、撤退していきます」
「今度はこちらの番だ。追撃しろ!」
サンフランシスコとは立場が全くの逆である。
追う米軍、逃げる日本軍。米軍は砲弾の雨を降らせ続ける。
「くっ。流石に尻尾を巻いて逃げはしないか」
日本軍は逃げながらも、組織的に米艦隊を攻撃してくる。
だが、米艦隊の方が優位であることに変わりはない。なおも、米艦隊は砲撃を続ける。
しかし、なおも砲撃戦が続くなか、戦いに中断の報せが入った。
「閣下、主機が限界です。このままでは、墜落します」
既に、米艦隊は超高高度を飛行していた。それに必要なエネルギーは日本艦隊の数倍である。
これ以上この高度を維持するのは不可能であった。
「仕方ないか。全艦、ロッキー山脈に引き返せ」
だが、日本艦隊に大きな打撃は与えた。防衛戦としては間違いなく米軍の勝利であった。




