R号作戦始動
大日本帝国って、作戦名に普通にアルファベット使ってたんですよ。
崩壊暦214年1月8日07:32
ここは、サンフランシスコ空港である。
少し前までは、米軍の抵抗の一大拠点であったが、今では逆に、帝国軍のロッキー山脈侵攻の拠点となっている。
そこには、新たに編成された連合艦隊が集結している。
「全艦に告ぐ。これより、ロッキー山脈攻略作戦、『R号作戦』を開始する」
連合艦隊は、次々と飛び立っていく。
その偉容は、第一艦隊を優に上回るものであり、東郷大将をして、勝利を確信せしめるものであった。
目指すは、ロッキー山脈北部である。その先には軍事都市カルガリーが控える。
ロッキー山脈は、要塞であるだけでなく、多数の敵飛行戦艦の根拠地となっている。山脈の南北から東に侵攻すれば、要塞線は無視できるが、常に山脈に潜む敵の脅威に晒されることになるのだ。
これが、R号作戦が立てられた所以である。
「近衛大佐、大和の機関は正常か?」
「ええ、閣下。問題なしですよ」
近衛大佐曰く、異常はないようだ。
「大和、問題はないか?」
「はい。全く問題ありません」
東郷大将は、確認に大和にも尋ねるが、正常らしい。大和の言葉なら信頼できる。
「よし。大和、離陸!」
大和はゆっくりと地上から離れていく。そして、連合艦隊旗艦は、東へと向かって行くのだった。
連合艦隊は、第一艦隊と第三艦隊を併せたものである。そして、空母4隻、戦艦10隻、巡洋艦22隻、駆逐艦36隻からなる大艦隊である。
奇しくも、彼の米軍サンフランシスコ防衛艦隊とほぼ同規模の艦隊である。
「さあ、諸君。作戦の確認だ」
ロッキー山脈までは、特に操舵がある程度自動化された大和では、しばらく暇なので、R号作戦に関する作戦会議が行われた。
「今回の作戦では、戦艦を主軸とする砲撃による敵要塞の破壊が主目的である。要塞の破壊の後には、カルガリーに侵攻し、空爆を中心とした攻撃で、敵を降伏させる」
ロッキー山脈の斜面には、幾百の砲台が鎮座している。対空砲もまたである。
今回は、前回のような奇策を使う予定はない。正攻法を以て、連合艦隊の火力で押し潰す。
帝国軍には、この連合艦隊に絶対の自信があったのだ。
「ロッキー山脈をレーダーに捉えました」
ロッキー山脈がレーダーに入った。砲台の配置は白日の下となる。
「予想より多いな。東條中佐、何かあるかね?」
「はい、閣下。敵の砲台は異常に多いです。他の地点ではこのようなことは報告されていない以上、米軍はここで待ち構えており、その準備は万全と思われます。慎重に攻めた方が良いと思われます」
「そうだな。まずは、航空艦隊に砲台を潰させるとするか。神崎中佐、やってくれるか?」
「もちろんです!」
敵の砲台は、帝国軍の予想より遥かに多かった。戦艦で短期決戦で勝負を決める予定であったが、どうも無理なようだ。
東郷大将は、セオリー通りに敵砲台は事前に空爆で破壊することに決めた。
それに、砲台は増設されているが、対空砲は見られない。航空戦隊にとっては絶好の獲物であった。
「全機、出撃!」
各空母から、戦闘攻撃機が次々と飛び立つ。数はおよそ420。それも、予備隊を艦隊に残してこの数である。
「さあ、みんな。狩りの時間だ!艦隊の障害を破壊する!」
日本航空艦隊は、ロッキー山脈に津波のように襲い掛かる。
もはや、一方的な攻撃あるのみと思われた。だが、そう事はうまく進まない。
「なっ、対空砲火か。各機散開!かわせ!」
神崎中佐を襲ったのは、どこからともなく現れた対空砲火であった。突然現れた鉄の暴風に、神崎中佐も退かざるを得ない。
米軍は、黙って撃たれることを許さなかった。




