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終末後記  作者: Takahiro
2-3_欧州攪乱計画
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ゲッベルス上級大将との再会

そして、東條少将はアクセルを踏んだ。自動運転というやつももちろんあるが、東條少将は、というか軍人全般は、自らで運転することを好む。


一般市民ならば、自動運転だけで全然事足りる。しかし、臨機応変な対応が求められる戦場では、自動運転など使ってはいられない。故に、軍人は自らで軍用車を運転することが多い。その流れである。


「ああ、近衛大佐、聞こえているか?」


東條少将は大和の近衛大佐に通信をかけた。


「鮮明に、聞こえておりますよ」


近衛大佐はすぐに応えた。


「それは良かった。早速なのだが、一つ、やってもらいたい事がある」


「何でしょうか?」


「先程、初めてお会いした人がいただろう?彼を呼び戻しておいてくれ」


つまり、去ってしまったゲーリング上級大将を呼び戻して欲しいということである。ここは完全なるソビエト共和国領内だ。通信が盗聴されていないとは限らない。いや寧ろ、盗聴されてなかったら驚くくらいのものである。ここは即席の暗号で伝えるしかない。


「分かりました。すぐに彼を呼び戻します」


近衛大佐は察してくれたようだ。これで一安心である。


「頼むぞ」


「ええ、では、失礼します」


「ああ」


近衛大佐の足音が最後に聞こえた。実のところ、ゲッベルス上級大将が何処にいるかは把握していないのである。出来るだけ早く行動しなければ、ポーランド辺りに帰ってしまう。近衛大佐に全て任された。


それから30分程。二人は、ソビエト共和国の道路交通法に引っ掛かる極限を攻めた運転で、 どうにか大和に帰り着いた。


車から降りると、先には近衛大佐が立っている。


「ゲッベルス上級大将は見つかったか?」


「ええ。今は、いつもの会議室に控えて頂いています。ですが、どうしてですか?」


「ああ、それはだな……」


東條少将はこれまでの出来事の一部始終を語った。ジュガシヴィリ書記長と再会し、先の襲撃の捕虜をもらい、しかもそれがイタリア王女だったと。


近衛大佐はたまげていたが、割合すぐに何をすべきか理解した。


「つまり今は、彼女とゲッベルス上級大将を会わせて、より正確な情報を得ようということですな」


「そうだ。時間も惜しい。すぐに行こう」


「了解であります」


今回は、ミネルヴァ王女が王女であるということが問題なのではなく、純粋に戦争捕虜として情報を得たいが為に、ゲッベルス上級大将の臨席を賜ったのである。


さて、会議室には、いつも通りに並べられた長机に、ゲッベルス上級大将やヘス総統、ゲーリング大将、そして大和が既に座っていた。さも当然のようにミネルヴァ王女を連れた東條少将もサッと席に着く。


「東條少将、まさかこの短期間で再会出来るとは言え想定外でしたよ」


ゲッベルス上級大将は言う。確かに、ついさっき明らかな別れの挨拶をしたばかりであった。


「私もです」


「でしょね。そしてですが、少将、先程、我が東方軍司令部より、極秘の電報が届きました。これを見てみて下さい」


ゲッベルス上級大将はわざわざ紙に印刷された電報を差し出した。書かれていた内容は以下の通り。


「レーマー大佐よりゲッベルス上級大将へ


本日12月23日未明、0153、ドイツ・ポーランド州境付近にて、予定にはない行動を取る親衛隊空母2隻を確認。艦型より空母ユニコーン及び空母クイーン・エリザベスと確認


0210、207機の航空艦隊のキエフへの出撃を確認


0423、195機の帰投を確認


0748、両空母、東方軍の哨戒網より離脱、グレートブリテン島方面に向かった模様


追記


1200現在において西方軍及び南方軍管轄圏内に両空母が確認されたという報告はない


以上」


レーマー中佐というのは、ゲッベルス上級大将の副官であり、現在は東方軍司令部に居残っている佐官だ。そんな彼からの簡潔な報告は、先の襲撃の犯人が欧州合衆国であると如実に示した。


「それならば、私の記憶と、合致しますね」


ミネルヴァ王女は言う。


「ん?そこの方は、まさか、イタリア王家の……」


ヘス総統は彼女の顔を知っているようだ。まあ、十分な有名人である。不思議なことではない。


「ええ。私は、ミネルヴァ・ディ・サヴォイアです」


「そんなお方がどうしてここにいらっしゃるのですか?それに、まさか、貴女が東條少将の言っていた捕虜なのですか?」


「ヘス総統、それに他の方々、まずは順を追って説明しましょうか」


東條少将はこれまでのことをもう一度説明した。


「ですが、そこの殿下、信用出来るのですか?仮にも欧州合衆国構成国の王女、しかも訓練された兵士が、そう簡単に利敵行為に走るとは思えません」


ゲッベルス上級大将は辛辣に指摘した。それは全くの道理である。ミネルヴァ王女が真実を口にしているとは、誰にも保証出来ないのである。



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