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終末後記  作者: Takahiro
2-3_欧州攪乱計画
319/720

襲撃

「では、私はそろそろ退散させてもらいます。私の存在が露見しては、色々と問題がありますので。またお会いしましょう」


「またお会いしましょう、閣下」


そしてゲッベルス大将は静かに去っていく。どうやるかは知らないが、キエフからバレずに立ち去る手段があるらしい。東條少将は彼を見送った。


だが、その時、大和中のスピーカーからけたたましいサイレンが響いた。


『ぜ、全艦!西方300km付近にて、こちらに急速に接近する機影を確認!繰り返す!』


「何だと!?ヘス総統、失礼させて頂きます。それと、ゲッベルス大将も引き留めておいて下さい!」


東條少将は、そう叫ぶと、全てを投げ捨て艦橋へと走っていった。近衛大佐もそれに続く。報告が本当ならば、陣頭指揮を執らねばならない。


艦橋では皆が東條少将を待ちわびていた。


「状況は!?」


「このように」


直ちに、メインスクリーンにレーダーが捉えた映像が流される。


敵機、数はおよそ200、見た目からして戦闘攻撃機、国籍は不明、それが一直線にキエフを目指している。どう見てもやる気だ。


「神埼中佐を呼び出せ!」


「はっ」


そしてすぐにメインスクリーンに神埼中佐の姿が映る。場所は格納庫の

ようで、また、手持ちのカメラで通信しているようだ。後ろでは兵士が慌ただしく行き来している。


「スクランブルがどうとかいう話なら、既に総員が動き始めてますよ」


「おお、それは助かる。すぐに出撃し、邀撃の用意をしてくれ」


「了解です。直ちに全戦力を投入します。では」


通信は一瞬で終わった。


神埼中佐は、既に状況を理解し、最適な準備を進めていた。東條少将の仕事は、それにただゴーサインを出すだけであった。300kmならば、かかる時間は7分程。格納庫から出す時間も含め、何とか間に合うかといったところ。


既に甲板に出ていたものは上空を旋回している。だが、大和に搭載出来る数は精々20機程度、ハンニバル中佐の戦艦アルジェリアと合わせても、自由アフリカ軍としては40機くらいしか用意出来ないのだ。


「閣下、キエフ空港より受電。戦闘攻撃機180機を用意したとのことです」


「おお、ありがたい。神埼中佐にも、それと協力するよう伝えてくれ」


「了解」


キエフ空港にも、それなりの戦力が纏まっている。純軍事的には大した数でもないが、そもそも戦闘を予測していなかった割には、十分過ぎる戦力だと言えるだろう。こちらの自前の戦力と合わせれば、数的優位は確保出来る。


そして4分半程が経った頃。神埼中佐から通信がかかってきた。


「閣下、全機、出撃しました」


「よし。指揮は全て中佐に任せる。戦闘に備えよ」


「了解です」


全機が大和とアルジェリアから飛び立った。そして、艦隊上空でホバリングに入り、来る戦闘を待つ。


「中佐殿、距離100を切りました」


「了解。距離50でミサイル斉射、接近戦を仕掛ける」


「はっ」


神埼中佐の作戦は、特に奇をてらうこともない、普通の作戦である。


「それと、ソビエトの奴らは、こっちに従ってくれてるのか?」


「恐らくは、はい」


「そうか。まあ、従わない理由もないか」


今のところ、ソビエト共和国軍は、自由アフリカ軍の意向に沿った行動をしてくれている。もっと言えば、神埼中佐の命令に従っている。まあ、ソビエト人は合理主義者だ。指揮系統の一本化の理を知っているのだろう。


「距離80……70……60……」


確実に敵は迫ってきている。


「50!」


「全機!ミサイル斉射!」


神埼中佐は命じた。


対空ミサイルは、一機につきおよそ20発ある。そのうち、同時に撃てるのは6発までだ。それを斉射し、合計1300発程のミサイルが一斉に敵に襲い掛かった。


「全機、散開!ミサイル躱せ!敵に接近せよ!」


敵も同様にミサイルを放ってきた。対策は逃げることである。また、敵も同じく散開し、こちらのミサイルを次々と躱した。


被害は双方とも十数機程度。そしてすぐさま機関砲同士の撃ち合いが始まる、と思われた。


「中佐殿、敵が退いています!」


「何?追撃はするな。暫く監視しろ」


敵は、対空ミサイルを放ったと思えば、すぐさま引き返し始めた。神埼中佐はそれを監視するよう命じ、いつでも反撃出来るようにしたが、その時は来なかった。


この戦闘は15分足らずで終わった。




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