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終末後記  作者: Takahiro
2-3_欧州攪乱計画
315/720

ロンドンにてⅡ

サブストーリーです。

ある日、ロンドンに滞在していたアデナウアー大統領の元に、一通の手紙が届けられた。そう、メールでもなければ手紙である。


差出人はベルリンに留守番しているヒムラー大佐であり、手紙には、「これを読み終わり次第、焼却すること」とまで書かれていた。おまけに、それを持ってきたのもまた将校であった。


手紙には、「東方で不穏なる動きあり。大陸に戻られることなかれ」とだけ書いてあった。


「ついに、この日が来たか……」


アデナウアー大統領は、手紙を燃やすと、一人小さく呟いた。また、彼は一人の男を呼び出させた。


やがて静かなノックの音が響いた。


「ライエン大将です」


「入りたまえ」


入ってきたのは、貴族的に派手に装飾した黒軍服を纏った、若い男であった。


「早速だがライエン大将、これを見てくれ」


アデナウアー大統領は先程の手紙を差し出した。ライエン大将は

さっと目を通す。


「なるほど。それで、私を呼んだと」


「ああ。親衛隊全国指導者の君を、だ」


ライエン大将は、欧州合衆国政府に直隷する武装組織、親衛隊の長である。親衛隊は、国軍とは全く別の組織を有し、有事には国軍と協力して戦闘を行い、平時には国軍を監視し、クーデターなどを未然に防ぐ。


憲兵との違いは、憲兵が軍内部の統制をするのに対して、親衛隊は軍の上層部も含めた全てを統制する。


因みに、親衛隊の兵力は国軍の兵力とは別に数えられる。これは各軍縮条約の抜け穴であり、他の国々も躊躇いなくやっている。大日本帝国の近衛艦隊が代表的だろう。


「不思議ですね。親衛隊には、今のところ、不穏という報告は入っていませんが。それに、これは、軍人の手紙にしては、あまりにも要点を欠いています」


「確かに、そうだ。だが、あのヒムラーのことだ。何らかの危機を察したに違いない」


「それで、親衛隊()()()()()を言いつけに、私を呼んだと」


「そうだ。チャーチル作戦(政府存続計画)のプランEを発動だ」


「了解しました」


親衛隊最後の任務とは、クーデターが起こった際、政府を護ることである。親衛隊の戦力は全てでおよそ2個艦隊、国軍の9個艦隊には遠く及ばないが、それなりに耐えることは出来る。


内戦は既に始まっている。


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