ある少女の記憶Ⅰ
二章最初のサブストーリーです。
「彼女」は、人々の一団とともに、捨てられた土地を渡り歩いていた。屍人が彷徨き、文明の灯火は見えなかった。
「都市」を知らず、人類の文明はもはや消滅したと信じる人々だ。
彼らは食料の調達から安全の確保まで、全てを自らで行った。
その生活は不便極まりなかったが、周りの屍人が大した脅威でないとわかると、そう悪くはなかった。
「崩壊」から数週間のある日、彼らは一隻の飛行戦艦と遭遇した。初めて見た文明の生き残りに、彼らは歓喜した。
彼らは助けを求めた。だが、飛行戦艦は彼らを撃った。手を振る人々に向かって、菊花の付いた飛行戦艦は、容赦なく砲弾を浴びせた。人体などひとたまりもなく、粉々に砕け散った。
彼らの大半は死んだ。また、何故だかわからないが、飛行戦艦から一人で降りてきた軍人は、その死体のいくつかを回収していった。
結局、彼女と僅か数人が生き残り、また、放浪生活が始まった。
どうしてか、屍人は彼女を襲って来なかった。ある人は、それは遺伝で決まるのかも知れないと言った。
そして何故か、数人の仲間達は、都市に近づこうとしなかった。彼らは怯えているように見えたし、また、怒っているようにも見えた。
それから幾年が過ぎ去ったある日。少女は既に仲間を失い、一人寂しく旅をしていた。
「誰か、他の人類にも会ってみたいな」
波打ち際で目覚めた少女は、そう呟き、日が昇る方に一人歩きだした。