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終末後記  作者: Takahiro
2-2_決起
287/720

ある怪我人の記憶

サブストーリーです。

その女はかつて気丈な少女であった。少女はよく遊び、よく怪我をして帰ってきたものだった。しかし、ある日、そんな小さな幸福は唐突に消えた。


時に2177年。少女は都市交通AIシステムを外れた違法車に轢かれたのだ。脊椎は半ばで折れ、体は背中側に曲がっていた。


当然ながら下半身は完全に麻痺した。だが、不幸中の幸いか、上半身の損傷は少なく、少女は事故を生きながらえた。


それからは車椅子での生活だった。そして、少女はいつも下を向いていた。何かに不自由することはなかったが、ただ足が動かせない、自分の足で動けないというのは、少女の心を蝕むに十分であった。


さて、翌年には日米戦争が始まった。少女が徴兵されることは、勿論、なかった。


そして更に5年が経った時、人類の文明は崩壊した。これは所謂ゾンビが世界中を覆い尽くしたからだった。彼女は、自分はすぐに死んで終わるのだろうと思った。彼女が生きていくには社会インフラが必須だったから、電気がなければただの一歩を進むことすら出来ないからだ。


だが、彼女が死ぬことはなかった。それどころか、どんな傷も治り、食事すら必ずしも必要としない、新しい体を手に入れたのだ。どうも、木の皮のような何かに覆われた上半身は光合成をしているらしかった。


そしてある時彼女は思った。どんな怪我も治るのならば、この下半身を斬り落として再生させれば、自分は再び歩けるようになるのではないかと。


彼女は試しに足を斬り落としてみた。すると、およそ3ヶ月でそも足は再び生えてきた。それも、事故でついた大きな裂傷も治っていたのである。


その時彼女は確信した。


だが、下半身を斬り落とすとは、そう簡単に出来る事ではない。足くらいなら、落ちていたノコギリで切断出来たが、下半身は流石に無理であった。彼女の友もまた、その手段を持ち合わせていなかった。


だが、数日したある日、彼女は、病院の跡地で、まだ使えるレーザーカッターを見つけた。彼女は友に頼み、自らの下半身を切断させた。体は綺麗に真っ二つに分かれた。


また、傷口が焼け焦げた為、出血も少なかった。


それから一週間もすると、僅かだが、体が下に伸びていた。再生だった。彼女は大いに喜んだ。そして4ヶ月も経った頃には、彼女の半身は完全に再生したのだ。


そして、その足は、動いた。彼女は嬉しさのあまり涙を零した。


彼女は再び自由に動かせる足を手に入れたのだった。





だいたい誰かわかる。

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