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終末後記  作者: Takahiro
2-2_決起
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クマシ攻防戦Ⅰ

崩壊暦214年12月9日12:14


「敵軍、距離、200km地点まで接近」


「了解だ。全軍、全対空砲、対艦ミサイル、用意」


ナーセル中将は全軍に指令を下した。艦隊は一斉に戦闘準備にかかる。対空砲は敵軍、西に向けられ、各種ミサイルランチャーはその口を開いた。


現在彼が乗る艦は戦艦コンゴである。前の戦艦リビアは完膚なきまでに破壊されたが、彼自信は生きていた。案外敵は優しかったようで、艦橋が直接撃たれることはなかったのだ。


まあ、あれ程の精度で戦艦一隻を狙い撃つミサイルが艦橋に当たらなかったとは、何らかの意思を感じるが、今は、ただ幸運に感謝するとしよう。


アレクサンダー中将は、そもそも旗艦「クイーン・エリザベス」を喪っていない為、当然ながら生還している。


サーダート中将は、その旗艦を撃沈されたが、何とか生き延びた。


そういう訳で、アフリカ連邦共和国軍の首脳部は無事である。


「サーダート中将、アレクサンダー中将、準備は整いましたかな?」


「ああ」


「ええ、勿論」


「それでは、全軍、対艦ミサイルで以て敵を押し潰せ!」


さて、ナーセル中将のこの一言で、クマシ攻防戦の火蓋が切って落とされた。


クマシ及び艦隊から、無数の対艦ミサイルが放たれた。更にそれが間断なく続く。


アフリカの生産力に欧州合衆国の援助を合わせれば、その生産力は自由アフリカの数百倍となる。対艦ミサイルなど有り余っているのだ。


「とにかく、物量で押せ!敵に迎撃を許すな!」


ナーセル中将はなおも攻撃の手を緩めない。ミサイルが自由アフリカ艦隊に届く前から、幾度も幾度も斉射を繰り返させた。


「第一射、到達しました」


ついに最初に撃った対艦ミサイルが届いたようだ。


「よし。敵の被害は?」


「それなのですが……」


「何だ?まさか……」


「はい。被害は皆無です。敵は全てのミサイルを撃ち落としています」


「何と……」


ナーセル中将は絶句した。敵は、こちらより寡兵であるにも関わらず、全ての対艦ミサイルを迎撃していたのだ。あり得ない程に優秀な戦術指揮だ。


そして、その後も幾度もミサイルが敵を襲った。敵を見れば、爆煙でその姿が覆われていたが、しかし、その煙は全て撃ち落とされた対艦ミサイルが爆発した時のものだ。


敵の装甲を砕いたものは、数千の全体のうち、僅か十数でしかなかった。一隻の戦艦を落とせる程の数ではあるが、しかし、それが分散していては、成果は皆無である。アフリカ軍は駆逐艦の一隻すら落とせなかった。


「全軍、攻撃止め」


ナーセル中将は悔しげに告げた。あの鉄壁の艦隊には、何をどうしようと、傷をつけられる気はしなかった。


「ナーセル中将」


と、余裕そうな声をしたアレクサンダー中将が通信をかけてきた。


「やはり、ミサイルなどでは、どうにもなりませんよ」


「わかってますよ」


ナーセル中将は苛ついた声で応えた。そんなことを言う為に人の神経を逆撫でしに来たのかと。


「我が軍は、奴等と直接砲戦を交えることを志向しますが故、閣下には、その覚悟を決めてもらいたい」


「はいはい。検討します。それだけですか?」


とは言え、アレクサンダー中将の言い分は多分に真理を含んでいた。現実的に考えて、勝利の為には、優勢な火力を活かしての砲戦に訴えるのが一番だろう。


「ええ。さようなら」


「さようなら」


ナーセル中将はせいせいしたとばかりに手を振った。そして、次に、サーダート中将に通信をかける。


「サーダート中将。砲戦をすべきと思うか?」


「ああ。戦艦と巡洋艦で戦うしかないだろう」


サーダート中将も、これについては同じ意見のようだ。


「了解だ。全軍突撃といこうか」


「ああ。それでいこう」


「では、準備してくれ」


「了解」


通信は終わる。


艦隊はその陣形を輪形陣から単縦陣に変更する。これはまさに砲戦の為の陣だ。


「全軍突撃!敵を挟撃せよ!」


ナーセル中将は号令を飛ばした。艦隊は動き出す。しかし、その瞬間、凶報が訪れた。


「閣下!敵艦隊より航空部隊が出撃!数はおよそ2000!」



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