リヤドにてⅡ
サブストーリーです。
連合王宮の片隅で、三人の政治家が顔を会わせていた。廊下の隅での立ち話である。
集まったのは、シリアのサッダーム首相、イラクのレザー王、アフガニスタンのウマル師であった。正義派の主要国の指導者達である。
「ウマル師。大東亜連合との国境の国家を率いるとは、大変ですよね」
サッダーム首相は言う。ウマル師率いるアフガニスタン・イスラム首長国は、インド連邦と国境を接している。アラブ連合と大東亜連合との紛争が最も起きるのがこの国である。
「ええ、ええ。インド連邦とアフガニスタンは仲が悪い。そこで大東亜連合との関係が悪くなり、ついには大日本帝国と破局したとなれば、我々、正義派の面目がないのでな」
「今後とも、宜しくお願いしますよ」
正義派とは即ち、大日本帝国との友誼を重んじる一派である。その対極は利益派だ。
ここでいう正義とは、大日本帝国に味方するというよりかは、アメリカに味方しないという意味が大きい。アメリカは長年、中東への侵略者であった。
シリア、イラク、アフガニスタンはどれも、アメリカの侵略を受けてきている。歴史的に見ると、シリアとアフガニスタンは侵略を尽く跳ね返してきたが、イラクは一度敗北し、後に王政復古を経て、アメリカの支配を脱した。
「陛下も、イランとサウジに挟まれ、ご苦労なさっておりますね」
サッダーム首相はレザー王に話しかけた。アラブ連合において、王と首相の権力は等しいが、そこは伝統を重んじ、王の方が名目上の立場は上である。
「全くだ。どうしてイランが親米の不正義に走るのかが知りたい」
イランは、長年に渡って反米路線を貫いているにも関わらず、何故か、親米の風潮が支配的である。まあ、恐らくは政治の問題だろうが。
正義派と利益派は、一応は思想の違いで二つに別れているが、実際のところは大国と小国の対立であるのだ。
「仕方ないのでしょう。彼らも、アメリカなどに味方したいとは思っておりますまい」
「む、そうかもな。政治とは、厄介なものだ」
そんなこんなで、三人はすぐに解散した。




