東京にて
サブストーリーです。
帝都、首相官邸の廊下を、一人の恥も外聞も無い男が歩いていた。白人、背は高く、図々しくも、常に人を嘲笑う目をしている男だ。
その目指す先は原首相の私室であった。男はドアをノックした。
「どうぞ」
ドアの向こうからは面倒ごとを見てしまったような声が届いた。しかし男は動じず、愛想笑いとともに部屋に入った。
「よくまあ、どうした敵国にこうも当然のように入られるのですかね」
「長年の政治家人生でね。随分と神経が麻痺してしまったようです」
「はあ。そうですか。ええ。まあ、そんな御託は置いておいて、さっさと件の話について、伺いましょうか」
「ありがとうございます。そして、私が何がしたいかと言えば、まあお察しでしょうが、アメリカ連邦における復権です」
「でしょうな。あなたならば、私利私欲の為なら国など安いものでしょう」
「いえいえいえ。高いからこそ売り払うんじゃないですか」
「はあ。まあ、そうですか」
原首相は終始呆れた様子であった。この白人、東洋人と西洋人の違いなどでは説明できない程、原首相とはかけ離れた頭をしていた。
例え政治家と言えども、少しくらいは国家の為になることをしようと思うものだ。ソビエトやアラブは言わずもがな、民主主義国家アメリカでも、それは同じだろう。
だが、こいつは違う。自分の為なら国を売るか?
「ああ、まあ、さっきの話は理解しました。帝国は、アメリカ連邦を占領した後の軍政に、あなたを加えましょう」
人間としての原はこの男を嫌っていたが、政治家としての原首相はこの男を重役に就けてやることにしたのだ。
政治的に最も賢明な判断だからである。
チャールズ元帥が革命を起こしたとは言え、その国民にはあまり実感がないそうだ。保守派、無関心層を味方にするならば、この男が役に立つ。
「話は以上です。それさえ守って頂ければ、何も文句はありませんとも」
「へえ、そうですか。ではさようなら。ルーズベルト大統領閣下」
「さようなら」
ルーズベルトは何処かへ去っていった。
はい。これで終わりです。




