表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
終末後記  作者: Takahiro
1-1_サンフランシスコ攻防戦
27/720

サンフランシスコ爆撃

崩壊暦213年12月15日18:00


「サンフランシスコ爆撃を、開始せよ」


東郷大将は重々しく命じる。


事前にサンフランシスコ南西地区のパルチザンに対し、「ただちに投降せよ。然らずんば都市ごと焼きつくさん」と告げたが、一向に事態は収拾せず、サンフランシスコを爆撃することになった。


今回の出番は戦艦と巡洋艦のみだ。


また、東郷大将は、殲滅ではなく、示威行為を厳命し、爆撃用の炸裂弾ではなく、通常の五十三式徹甲弾を用いよう命じた。


上空に並ぶ主砲の全てが地上に向けられる。地上からすれば、その迫力は死を覚悟させるものである。


「撃て」


東郷大将は静かに命じた。


そして、各々の主砲は徹甲弾を地上に撃ち込んでいく。砲声は遥か遠くまで木霊し、爆炎は薄闇の地上を照らした。


建物は次々と破壊され、瓦礫と化していく。眼下には、逃げ惑う人々が見える。砲撃は続き、土煙が地を覆い尽くした。


逃げ惑う中にはパルチザンもいるだろうが、大半は無関係の民間人だ。


だが、パルチザンとの区別はできない。東郷大将はただ彼らを殺すことしかできなかった。


数分後、目立った建物は殆ど破壊されていた。高い建物ほど砲撃には弱いのである。後に残ったのは瓦礫の山のみであった。


「全艦に通達。攻撃を停止せよ。作戦目標は十全に達成された」


すぐに砲火は止んだ。


後に残るは破壊しつくされた町だけだ。東郷大将はさぞ恨まれることだろう。


「直ちに生存者の救護にあたれ。抵抗するものは、極力殺さず、生け捕りにせよ」


東郷大将が命ずると、飛行艦隊は次々と地上に降り立ち、地上部隊を展開していく。


「閣下、お気持ちはお察しします。しかし、これは、必要悪でありました。閣下が気に病む必要はないのです」


東條中佐は東郷大将に語りかける。


「ああ、わかってはいる。わかってはいるんだ」


だが、東郷大将の脳裏からは、自分が殺した無辜の民の姿が消えなかった。


幸いなことに、南西地区では大きな暴動は起きなかった。


そして、それ以降、帝国軍を悩ませたテロはぱたりと止んだ。


「閣下、これで、サンフランシスコ市民からの反感を買ってしまいましたね」


「そうだな。代わりに、福利厚生は厚くしなければ」


東郷大将は、この民間人虐殺を心から後悔した。


「このような政府に従うべきだろうか…」


誰も聞こえない声で東郷大将は呟いた。


かくして、甲号作戦は成功した。帝国はアメリカ西海岸の三都市を制圧し、更なる進行への土台を築いた。


これから帝国軍は東へと侵攻し、米連邦首都、ワシントンを目指すだろう。


戦火はまだ燻り始めたばかりである。


崩壊暦213年12月10日、世界を分かつ六大勢力の一つを率いる大日本帝国は、またその一つであるアメリカ連邦に宣戦を布告した。


これは後の世に第三次太平洋戦争と呼ばれることになる。


旧文明の崩壊の後、初めての列国間の戦争であり、飛行戦艦を筆頭とする数多くの新兵器が投入された。


それが何をもたらすか、誰にもわからなかった。その勝敗の行方もまた、誰も知らない。今はただ、自国の勝利を信じ、戦い続けるばかりである。



今回でメインストーリーの一章完結です。ひとまずの区切りです。

そして、もちろん、まだまだ物語は続きますよ。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ