ベルリンにて
サブストーリーです。
相変わらず雲が晴れないベルリン、その大統領官邸にて。
アデナウアー大統領以下の大臣らは、今後の政策を話し合っていた。まず、老獪なアデナウアー大統領が言った。
「さて、我が合衆国を囲む情勢は、不穏に過ぎる。そう思わないかな?諸君」
「ええ、まったくです」「まったくですよ」「そうですね」「その通りです」
皆人こぞってアデナウアー大統領に同意した。
ソビエト共和国は欧州への圧力を高めている。また、アフリカ内戦もアラブ連合とのせめぎあいだ。だが、それよりも重大な問題がある。それは、国内の反政府勢力である。
「あのナチどもは、どうなっているんだ?」
「現在、ソビエト共和国に潜伏していると伝わっています」
「そうか。それはまた厄介だな」
ソビエト共和国そのものが問題なのではなく、その中にいる、国家社会主義ヨーロッパ労働者党の残党が問題なのである。ヒトラー大総統の党を模したこの党は、問題なことに、国内での支持者が多い。
かつてドイツ帝国がロシア帝国にレーニンを送り込んだように、ヘス総裁がヨーロッパに送り込まれてくる可能性は否定できない。と言うか、その公算の方が大きい。
アフリカ内戦、第二次太平洋戦争により勢力均衡政策は崩壊し、世界は再び戦乱の時代へと入った。戦乱の時代に於いては、相手を謀略で潰すのもまた常套手段である。
「引き続き、国内への監視を強めるのと、アフリカ内戦の早期終結を目指すように」
「はい、大統領閣下」
正直に言って、取れる手段はあまりない。この話題については、いつも通りの警句に終わった。
「ところで、『ゼカリヤ』の準備は進んでいるのかな?」
アデナウアー大統領は尋ねた。
「現在、完成度は85%です」
「なるほど、良いな。早いうちに完成させろ」
「勿論です」
ゼカリヤは、欧州合衆国が文明崩壊後に設計した兵器である。文明崩壊の前、グレートブリテン戦争などでは、全く見向きもされなかったが、この世界では高い需要がある。
「ロンドン艦隊も、常日頃より戦争への準備をさせるように」
「はい。閣下」
ロンドンはグレートブリテン島の南端の都市だ。そして、欧州合衆国、ひいては全世界でも比類なき要塞都市でもある。どうしてこんな場所に要塞があるのか、その所以は推して量るべし。
「では、次は財政の話だが……」
会議は続く。
ゼカリヤって名前を辿れば、とある兵器にたどり着きますね。




