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終末後記  作者: Takahiro
1-6_内乱
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飛行艦について

どうして駆逐艦だけではどうにもならないのかって話ですね。

「空を飛ぶ戦艦を造ろう」というアイディアは、21世紀だったら、馬鹿げた発想だと、相手にもされないだろう。だが、22世紀に入り、このアイディアは脚光を浴びることとなる。


事の始まりは、ミサイル万能論と航空機万能論の崩壊である。


そもそも、戦艦が廃れた理由というのは、航空機による攻撃に対し、航空機以外の対抗手段がなかったからだ。どれほど対空兵器を積もうとも、攻撃機には勝てなかった。


また、敵艦隊や地上の目標への攻撃手段として、長射程のミサイルが開発された。圧倒的な距離からの攻撃を可能とするミサイルの出現によって、艦砲というものは完全に廃れた。


だが、世紀を跨ぐ頃、これらは徐々に覆されていった。対空ミサイルの飛躍的発展と、ミサイルそのものの技術の停滞である。


対空ミサイル、その他目標に対するミサイルは、ともに極致に達した。そして、そうなった時、勝ったのは対空ミサイルであった。いくらミサイルを撃とうとも、その殆ど全てが迎撃されてしまうのである。また、攻撃機すら、対空ミサイルの前にはただの的であった。


但し、後の技術発展で攻撃機はそれなりの有用性を保ったことは覚えておきたい。


各国はこの千日手状態を物量で押しつぶそうと考えた。しかし、確かにそれは有効であったが、余りにもコストが嵩み過ぎた。そこで研究者が閃いたのは、絶対に迎撃されない武器、火砲を使おうというものであった。


まず陸上では、多数の対空ミサイルに守られた野戦砲が復権を遂げ、海上でも、艦砲を復活させる流れが生まれた。そして海上での試みは上手くいった。しかし、陸上のそれは上手くはいかなかった。


各国は、一昔前の技術を掘り起こし、超重装甲の戦闘車両を多数配備した。これにより、野戦砲程度では威力が足りないという事態が発生した。だが、これ以上の巨砲を運用するのは、地面に車輪がめり込むなどの「重すぎる」という理由で否定された。


そこで考え出されたのが、巨砲を空に浮かべてしまえばいい、即ち、飛行艦を造ろう、というアイディアである。


突拍子がなさ過ぎるだろうと思われるかもしれないが、22世紀の技術を使えば、数万トンの物質を浮かべることは可能であったのである。


さて、各国が初めに開発したのは現在では飛行巡洋艦に分類されるものである。即ち、そこそこの対空ミサイルとそこそこの艦砲を浮かべたのである。だが、案の定これは微妙な結果に終わった。


対空ミサイルは足りず、敵の地対艦ミサイルに沈められる始末。艦砲も弱く、大した損害は与えられなかった。一言で言うと失敗であった。


そこで各国は、砲撃の役割と迎撃の役割を分割し、飛行戦艦と飛行駆逐艦が造られた。そしてこれは成功した。


飛行戦艦から放たれる口径50cm以上、重さ2000kg以上の砲弾は、辺りの地面ごと敵を吹き飛ばした。一方、飛行駆逐艦から放たれる無数の対艦ミサイルは、あらゆるミサイルを弾き返したのだ。


この分業は大成功に終わった。もっとも、これで巡洋艦が廃れる事はなく、双方の機能を持ち、駆逐艦と戦艦のバランスを調整する艦として、ついに残り続けた。


こうして造られた飛行艦は、早くも2132年には「飛行艦隊」という概念を持つこととなる。戦艦、駆逐艦、巡洋艦を組み合わせた艦隊は、25世紀になってもその基本は変わっていない。


そして、飛行艦同士の戦争の頂点となった諸国民戦争(人類解放戦争)の時代には、様々な飛行艦が造られた。純粋に飛行戦艦の能力の限界に挑戦した「大和」。新進気鋭の電磁障壁を採用し、特異な外見で造られた「キエフ」。単艦の規模としては世界最大で、飛行要塞と呼ばれた「カルタゴ」。


しかし、あの「崩壊」が訪れた。人類の99%が死亡、或いは屍人となった暗黒の世界の到来である。


それは、人類にとっては地獄のような世界であったが、しかし、飛行艦にとってはまさに楽園のような環境であった。


2250年頃には、人類の技術力、工業力は文明崩壊前の半分程にまで復興し、飛行艦を新たに建造出来るまでになった。世界を結ぶ手段は海路と空路のみになり、飛行艦の意義は格段に上がった。そして、23世紀は、飛行艦の艦隊決戦が戦争の勝敗を握る時代となったのだ。


またこの時期に飛行空母が生まれた。これは、地上に一切の飛行場を建設出来なくなったからである。旧文明の世界では、飛行空母などを造るよりも、地上に飛行場を建てたほうが圧倒的に安上がりであり安全であった。が、しかし、この利点は全て失われたという訳である。


かくして、現代の飛行艦隊システムは、旧文明の崩壊後に完成したのだ。



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