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終末後記  作者: Takahiro
1-1_サンフランシスコ攻防戦
22/720

サンフランシスコ最後の抵抗Ⅰ

長いので、二つに分けます。

あと、今さらなんですが、「屍人」は、「しびと」と読みます。ただ、アメリカではゾンビって呼んだりするので、それは大して重要じゃないです。

崩壊暦213年12月11日05:47


「敵戦闘攻撃機、来ます」


敵は僅かに残った戦闘攻撃機をけしかけてきた。


「対空砲、ミサイルで迎撃せよ」


東郷大将は落ち着いて対応を指示する。この程度ならば、炸裂弾を使わずとも対応できる。


「て、敵が我が艦隊を通過して行きます!」


「回っている?攻撃もせずか」


米軍は不可解な行動をとり始めた。第一艦隊の周囲をひたすらに旋回し、特に攻撃もしてこない。それは、餌に群がる鳥のようだった。


しかし、攻撃しない代わりに、ミサイルの回避率は非常に高い。第一艦隊の対空砲火は効果がないようだ。


「閣下、炸裂弾も使いましょう。いつ何をしてくるかわかりません。大和、できるか?」


東條中佐は大和に問いかける。


「はい」


「いや、止めておけ。今は対空砲で十分だ。炸裂弾はまだ使うな」


東郷大将は、あくまで、いつも通りを求める。不用意なことはすべきではないというのが彼のスタンスだ。


そして、東郷大将の予見は的中する。


「敵艦隊、動き出しました。敵の全艦がこちらに向かってきています」


「来たか」


「まさか、我々の作戦の焼き直しでもしようと?敵はそんな見え透いたことを…っ!どうした!」


その時、突然、大和に地震のような振動が走る。加えて、電力が不安定になったのか、モニター群が明滅している。


「第一エンジン被弾!」


初の大和の被害報告だ。しかも、エンジンがやられたらしい。もっとも、平常時の最高速度が平均の二倍である大和からすれば、戦闘にさほど支障はないが。


「何に撃たれたんだ!」


「上です。敵の戦闘攻撃機が攻撃を開始しました!」


敵艦隊の突撃と同時に、上空の戦闘攻撃機が攻撃を始めた。ついに、鳥は襲いかかってきたのだ。


「対空砲火を集中せよ。敵は回避できないはずだ。各艦、落ち着いて対応せよ」


東郷大将は、冷静に指示をする。


しかし、東條中佐は即時殲滅を提案する。


「閣下、今こそ、炸裂弾を使う時です。許可を!」


空からはミサイルが降り注いでいる。もはや敵は全ミサイルを撃ち尽くすつもりのようだ。


「中佐、敵の狙いは、まさにそれだ。本命は艦隊の攻撃だろう。主砲は敵艦隊に向けておく」


「…了解しました」


炸裂弾を使わなければ迎撃できない訳ではない。東條はおとなしく従った。


だが、そこで、東條中佐はあることを発見する。


「駆逐艦を守っている?」


東條には、敵は、戦艦、巡洋艦を盾に、駆逐艦を守っているように見えた。駆逐艦を守ることのメリットと言えば…


「対艦ミサイルか!敵の狙いは」


「ああ、そうだろうな、中佐。では、中佐はどうするかね?」


「私ならば、対空砲火を艦隊前面に集中します」


「結構。そうしようじゃないか」


二人は対応策を共有した。米軍の対艦ミサイルは、現時点で最大の脅威だ。大和とて、まともに撃たれれば最悪、轟沈もあり得た。


「全主砲、五八式対空ミサイルは艦隊前面をいつでも撃てるようにしておけ。それ以外の対空砲は引き続き迎撃を継続せよ」


東郷大将は、対艦ミサイル迎撃態勢をとるよう命じる。だが、それは、上空の敵への迎撃能力の低下を意味した。


「島風、榛名、葛城被弾!」


「今は耐えるんだ。もう少しの辛抱だぞ」


現状、対艦ミサイルに備えるため、大半の火器を前方に向けている。上に向かっているのは、貧弱な対空砲のみ。敵からしたら、撃ち放題同然だ。


「吹雪、雷被弾!」


「もう少し、もう少しだ」


なおも第一艦隊は撃たれ続けている。各所で火災が発生し、煙が立ち上っている。


勝利のためには、ひたすらに耐えるしかなかった。

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