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終末後記  作者: Takahiro
1-6_内乱
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東京攻防戦Ⅲ

「第7、11、13区画に、敵が侵入を試みています」


大和は、簡潔に状況を伝える。当然ながら、大和の各所には、甲板に出る為のドアが設置されている。あまり使うことはないが、取り外す訳にもいかなかった。だが、今やそれは、敵にみすみすと侵入を許す原因となってしまった。


敵の侵入箇所は、右舷に2つ、左舷に1つである。


「早急に、態勢の整った部隊を向かわせよ!」


「了解!」


大和には、地上部隊およそ300が配属されている。ドアを挟む隔壁で敵を防ぐ間にも、その準備は進んでいる。小銃を構え、機動装甲服を着こんだ兵士達は、続々と敵のもとへ向かっていった。


「来るぞ。構えろ」


牟田口大尉の部隊もまた、第7区画の隔壁の前に構えている。周囲に遮蔽物もない為、廊下の影から狙い撃つ格好となる。もっとも、それは敵も同じだ。


そして、隔壁にヒビが入る。


ホロリと、鋼鉄の欠片が落ちた。


「撃てっ!!」


その瞬間、隔壁は崩れ落ちた。爆煙で、敵は見えない。しかし、彼らは撃つ。兎も角、前を撃つ。この狭い廊下だ。撃てば当たるだろう。


一方、敵も当然ながら撃ってきている。銃弾は、次々と兵士の耳元を掠めている。しかし、牟田口大尉は怯まない。


また、どうも敵は機動装甲服を着ているようだ。弾が弾かれる金属音の聞こえてくる。しかし、それをも撃つ。


「代われ!」「おう!」


弾が切れれば、射撃の役を横にいる兵士と代わる。そして、後ろで弾を込め、次に備えるのだ。このシステムで、牟田口大尉の隊は、一切間断なく、敵に銃弾を浴びせているのだ。


だが、なんだか様子がおかしい。


「何処を撃ってるんだ?あいつら」


天井や、床など、あらぬ場所に次々と弾が当たっている。それは、銃の使い方を知らない者が銃に翻弄されているようだ。そして、こちらには殆ど弾が飛んでこない。


だが、敵は敵だ。容赦はしない。なおも銃撃は続く。


やがて、煙が晴れてきた。敵の姿が徐々に浮かんでくる。


それは、同じく機動装甲服に身を包んだ敵、ではない。


「お、おい。あれ、は」


「ああ。屍人、なのか?」


そこには、緑と茶色の皮膚を覗かせる化け物、屍人が立っていた。しかし、それは、ただの化け物ではない。


まず、全身に鉄板が打ち付けられている。もともと痛みを感じない屍人の特徴と相まって、それは強固な装甲となっている。そして、銃は、手に()()()()()()()()()。寧ろ、手が銃になっているようだ。そして、屍人が手を動かす度に、銃弾が乱雑にばらまかれた。


「大尉、どうします?」


「頭は、まだ見えるな」


「はい」


頭は装甲に覆われていたが、幾つか穴が空いている。屍人を殺すには、無数の弾をぶち込んで失血死に至らしめるか、頭、若しくは心臓を撃ち抜くしかない。胸には装甲が着いていたが、頭は貫ける。


「少し後退し、敵を確実に殺していくぞ」


「了解です」


幸いにも、屍人はゆっくりと近づいてきている。やはり、愚鈍な化け物だ。牟田口大尉は、前線を後退させた後、距離を取りながら屍人を正確に殺すよう指示する。


屍人と比べれば、こちらの足は遥かに速い。ひとつ後ろの曲がり角まで進むと、一行は銃を構えた。そして、躊躇いなく弾丸を放つ。今度は、フルオートの連射ではなく、確実に当てていく単発だ。迫り来るゾンビを撃ち抜いていくとは、古くさいシューティングのようである。だが、それだけ余裕もあるのだ。


「余裕ですね」


「いや。油断するな。これでは敵が弱すぎる」


これでは、何故にこんな小細工をしてきたのかわからない。何の効果もないではないか。牟田口大尉のそんな予感は、そして、的中した。


「走り出した!?」


「くそっ、やはりか!総員下がれ!次の隔壁まで撤退だ!」


その時、突如として屍人が走り出した。それも、一斉にだ。とても、正確に頭を貫いている場合ではない。


兵士達は、一斉に走り出す。


「足を狙え!動きを鈍くしろ!」


牟田口大尉は叫ぶ。まずは、適当に足を貫き、屍人を走れなくしてやるべきだ。兵士らは、即座に従う。


走りながらも、銃弾をばらまいた。最前の屍人には、弾が次々当たっていく。屍人は、幾分か鈍くなったと見える。しかし、その後ろからも、どんどん屍人が湧いてくる。


「グレネード!」


最後に、グレネードで屍人を吹き飛ばした。廊下は血に染まる。吹き飛んだ屍人の体が、床に散らばった。また、後続の屍人も怯んだようである。そして、その隙に、一行は隔壁を閉じた。


「ふう。生きてるな」


何とか危機は乗り切った。しかし、まだまだ戦いは終わらない。




ここら辺から大和攻防戦なんじゃないかと思わなくもない。

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