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終末後記  作者: Takahiro
1-6_内乱
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ワシントン攻防戦Ⅰ

「敵、ミサイル射程に入りました」


「ああ。全軍、対艦ミサイル攻撃を開始せよ」


今回は、ケラウノス攻撃はなしである。何故ならば、もはやケラウノス基地の位置は互いに知られているからである。奇襲的に大量のミサイルを浴びせることこそ、ケラウノスの真価である訳だが、今は最早意味はない。


時間稼ぎには使えるが、何の為に時間を稼ごうと言うのか。今この場所こそ、決戦の地である。


「敵もミサイルを放ってきました!」


「焦ることはない。確実に迎撃せよ」


双方ともに、ありったけの対艦ミサイルを放った。無数の光は錯綜し、空を白く染め上げる。これまでに見たこともない物量が、今、衝突しているのだ。


そして、第二段として、双方から対空ミサイルが放たれ、光の壁を打ち砕かんと進む。また、対空砲からは、計算されしきった機関砲弾が放たれ、正確無比な射撃で対艦ミサイルを打ち砕く。


小さな爆発が、艦隊の眼前で無数に発生する。それは全て、落とされたミサイルの爆煙だ。殆どのミサイルは、至近距離まで迫る。しかし、その殆どは、重厚な対空防御に阻まれることとなるのだ。


「アメリカ軍同士で戦うとは、これ程に難しいものなのですね」


「ああ。やることがまったく同じだな」


代々、米軍は、あらゆる面において、ミサイルを重用してきた。対空防御に関しても、対艦ミサイルの飽和攻撃を突破することが前提だ。その為、全くミサイルが効かない。


日本軍に対しては、それなりに通じていたのだが、今回は別であった。


最早、ミサイルの時代は終わりを告げつつある。究極にまで進化したミサイルにおいては、対空ミサイルに分があった。これからは、絶対に迎撃されない砲弾が主力となるのであろう。


「さて、かつて散々に大艦巨砲を馬鹿にしてきた我々だが、そろそろ大艦巨砲を認める時になったようだな」


チャールズ元帥は言う。


「はい、閣下」


「ハーバー中将、私が何が言いたいかはわかるだろう?」


チャールズ元帥は、不敵な笑みと共に言う。これは、ハーバー中将にだけ通用する言葉遊びなのだ。


「ええ。奈落の門(タルタロス)を開く時でしょう」


そして、チャールズ元帥は、艦橋の全員に向かって告げる。


「全軍に、『奈落の門は開かれた』と伝達せよ」


「は?閣下、正気ですか?」


ただただ、きょとんとした顔が向けられた。


なるほど、命令は、全く意味不明なものだ。チャールズ元帥とて、ここの下士官らと同じ立場だったら、上官を職務遂行不可として更迭するところである。


「安心せよ。チャールズ元帥閣下は、正気であられる」


ハーバー中将は言う。ハーバー中将の言葉は、皆に響いたようである。


「了解しました。全軍に、『奈落の門は開かれた』と電信を送ります」


「ああ。宜しく頼むぞ」


さて、突然のメッセージに艦隊は混乱している。唐突な電信に対して、問い合わせが殺到だ。だが、それも折り込み済みである。


本当の目的は果たされただろう。


「ニミッツ閣下、アイオワより、『奈落の門は開かれた』とのメッセージを受信しました」


「了解だ。では、いざ行こうか」


ニミッツ大将は、()()にいる。厚い装甲に囲まれた車の中で、チャールズ元帥の指示を待っていたのだ。その車こそ、タルタロス(92cm地上自走砲)である。


タルタロスは、長大な車体に、長大かつ巨大なキャタピラをつけ、その上に、世界最大級の巨砲を乗せた自走砲である。そのデザインは、かつてのナチスドイツのカール自走臼砲を基にしたものだ。


「全車、砲を上げろ」


この場では、25のタルタロスが、その存在を秘匿しながら、確実に敵艦隊を追い続けていた。これは、光学迷彩で車体を隠すとともに、レーダーのも引っかからないよう、あらゆるステルス性を付与された自走砲である。


そして、ニミッツ大将の号令のもと、タルタロスは動き出す。隠していた砲は、ゆっくりとその姿を表していく。そして、その砲口は、敵艦隊に向けられる。飛行艦の腹は、脆弱だ。これで撃ち抜けば、ひとたまりもあるまい。


「全車、照準を設定」


目標は、第一に戦艦であり、第二に空母である。当たれば、どんな艦でも沈むのである。ならば、デカイ奴から沈めようという考えだ。また、戦艦を沈め、陣形を崩せば、味方艦隊は、たちまちに敵を殲滅してくれるだろう。


バレればこちらもお終いであるから、やはり勝負は最初の一撃にかかっている。これでもって、敵を突き崩す。


「照準、完了しました」


「よーし。やってやろうじゃないか。全砲門、撃方始め!」


鼓膜を破らん程の轟音が、地に鳴り響く。爆炎は、一帯を照らす。地上の屍人どもも、砲撃の衝撃波で吹き飛んだ。







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