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終末後記  作者: Takahiro
1-6_内乱
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ワシントン攻略前夜

唐突にチャールズ元帥の話になります。東郷大将は、暫く暇なんですね。その間、チャールズ元帥は死闘を繰り広げるのです。

崩壊暦214年11月10日12:30


戦艦アイオワにて。


「最後通告への回答はありません」


「よし。全軍に、出撃を命じよ」


ここは、五大湖南東の都市、ピッツバーグである。ピッツバーグには今や、全ての艦隊が集結している。その数、6個艦隊、200隻である。


ピッツバーグからすれば、ワシントンは目と鼻の先だ。その距離は、僅か500kmしかない。


艦隊は遥か地平まで広がり、地を黒金にて埋め尽くす。揃いきった主砲は、すべてワシントンに向けられている。それこそが、チャールズ元帥が用意できる最大の戦力である。


さて、チャールズ元帥は、ワシントン攻撃を決定した。これは、ハーバー中将の期待空しく、ワシントンが徹底抗戦に訴えている為である。


30分前に出した最後通告にて降伏を呼び掛けたが、ワシントンほ応じなかった。これにて、ワシントンはこちらへと宣戦布告をしたようなものだ。


「敵は4個艦隊を擁しており、油断は出来ません」


「ああ。タルタロスの配備は、できているな?」


「もちろんです」


現在、ワシントンには、無傷の4個艦隊が集結している。連邦政府は、ワシントン以外の守りは捨てたようである。その4個艦隊は、連邦政府に残された全ての戦力だ。


だが、こちらも、戦力で卓越している訳ではない。6対4であれば、こちらが負ける可能性は十分にある。


歴史上、5倍の戦力差をひっくり返した奴もいるのである。決して、日本国程の優位はない。


だが、諸外国の介入を防ぐ為にも、これ以上待つことは出来ない。もはや、戦争しかないのである。


「全艦隊の準備が整いました」


「ああ」


燃料弾薬の補給は済んでいる。艦の点検も完了した。鉄の装甲も、煌めく程に磨き上げられている。


「全艦、離陸せよ。目標は、ワシントンだ。これは、最初にして、最後にして、最大の決戦だ。各員、最善を尽くせ!」


艦隊は、一斉に上昇していく。地上は艦隊の影で真っ暗だ。そして、ワシントンに向け、艦隊は動き出す。


艦隊は、まず、3つに別れる。200もの飛行艦を纏めて運用するのは、流石に効率が悪すぎる。それぞれが2個艦隊で結成された艦隊が、平行して進む。陣形は、かなり横長なものだ。


そして、政府軍との戦闘の際には、この陣形でもって敵を包囲し、これを殲滅する予定である。チャールズ元帥は、これに勝利を確信している。


やはり、歴史に裏付けされた古典的な作戦の方が、ちまちまと奇策を弄するよりも上手くいくのである。今回もまた、古代からの包囲作戦を志向する。


そして、数時間後。遂に敵をレーダーに捉えた。


「ほう。これはまた、面白い陣形だな」


「ええ。是が非でも、我々に報復したいと見えます。まともに相手にすべきではないでしょう」


敵は、4個艦隊をひとつに纏め、更に戦艦で弧を描くような陣形をしている。まるで、包囲の中にあるかのようだ。


「包囲されるのを前提としているのか」


「恐らくは。極限まで耐え、最後の突撃で我々を突き崩すか、あるいは撤退するまで損耗させるつもりでしょう」


考えられる敵の作戦は2つ。


一つは、戦艦を盾としてこちらの攻撃から耐えつつ、機を見て、4個艦隊で突撃するというものだ。確かに、これ程の艦隊が突撃してくれば、対処は難しい。


一つは、攻撃をただひたすらに耐え続け、こちらが耐えきれなくなるまで待つというものだ。確実に、こちらにも被害は出るだろう。こちらが損害に耐えかね、撤退するまで待てば、勝機はある。


あくまで、とてつもない優位がある訳ではないのだ。戦闘の経過次第では、負けもあり得る。


「タルタロスを使うと言ったら、どう思う?中将」


チャールズ元帥は、最後の切り札を取り出した。


「私の見るところ、タルタロスを使おうと使わまいと、全体の被害は変わらないと思われます。即ち、被害が敵だけになるか、両軍に平等に出るかの違いに過ぎません。全ては、閣下の決断にお任せします」


タルタロスを使えば、敵を瞬く間に殲滅出来る。味方の死者も、殆ど出ないだろう。だが、それにはひとつ問題がある。


「人は死ぬな。確実に」


「はい。完全に艦を破壊しますから」


タルタロスの欠点は、強力過ぎることだ。いつものように、艦を回収し使うことは出来ない。


「だが、味方に被害は出ないか」


「はい」


この決断は、片方を選び難いものだ。リベラリストならば、タルタロスは使わないだろう。軍師なら、タルタロスをこれでもかと使うだろう。


そして、チャールズ元帥は決定した。


「私は、私に味方してくれた艦隊に、被害を出したくない。死んでくれるなら、敵に死んでもらう」


チャールズ元帥は軍師だったようだ。味方の命の方が、敵のそれより重いのである。


「閣下がそう仰るならば、私は従いましょう。タルタロスをもって、敵艦隊を破壊し尽くしましょう」


「ああ。宜しく頼むぞ。タルタロス隊に、攻撃の準備を」


「承知しました」


これよりは、アメリカでは500年来の内戦が始まるのだ。




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