モスクワにてⅦ
サブストーリーです。
モスクワ、クレムリンにて。
日本国が蜂起し、日米の戦争は終わったが、新たな戦争が起こった。ソビエト共和国は、東亜全域における覇権を条件に、日本国側につくことを決定した。
「同志書記長閣下」
ジューコフ中将は、会議を始めた。
「うむ」
ジュガシヴィリ書記長は応える。何が始まるかは、全員の知るところであった。ジュガシヴィリ書記長すら、冷たい汗を流していたのだ。
「まず、状況を確認しましょう」
「そうだな」
ジューコフ中将や、その他の幕僚らが、現下の情勢を説明する。それは、最後の確認であった。
現在、ソビエト共和国には9つの艦隊が存在し、それを取り囲む諸国へと矛先を向けている。平時であれば、艦隊を、欧州、中東、極東に3つずつを振り分けている。だが、今回の事態に際し、極東方面へと艦隊が動かされている。
極東では、5個の艦隊が攻撃の時を待っているのだ。これは、大日本帝国陸軍の全線力にも及ぶものである。また、日本国との合同作戦を行う為、敵の戦力はその半分だと想定される。
他方、艦隊を引き抜いた方面について。
欧州合衆国に対しては、匿っている国家社会主義ヨーロッパ労働者党のヘス総統を送るという最後の手段が残されている。内部から革命を起こさせ、欧州合衆国ごと潰すことも可能なのだ。さながら、かつてのロシア帝国がやられたことの意趣返しである。
アラブ連合に対しては、インド地域の領有を認めるという秘密協定を結んでいる。信用ならない奴らだが、利益には純真な者共でもある。
さて、条件は整った。
「ジュガシヴィリ書記長閣下。閣下の裁可があらば、ソビエト共和国は動きます」
ジューコフ中将は、最後に問い掛けた。ソビエト共和国の最高指導者たるジュガシヴィリ書記長は、宣戦を布告する権利唯一を持つ。
「わかった。ただいまを以て、ソビエト共和国共和党と全てのソビエト人民の名において、ソビエト共和国は、大日本帝国に宣戦を布告する」
その言葉は、議場の皆に記憶された。そして、その瞬間から、皆が動き出した。
「わかりました。我がソビエト共和国国家人民軍は、大日本帝国に対して攻撃を行います」
「頼んだぞ」
その時を以て、ソビエト共和国国家人民軍の全軍に、宣戦布告の旨が通達された。
満州、朝鮮と、戦いは続くだろう。




