北米事変に関する詔
サブストーリーです。古典文法を使おうとも思いましたが、僕の語学力では無理でした。
その日、その放送は始まった。事前に通告されていたものの、その内容までは明らかにされていなかった。帝国臣民は、それを、固唾を飲んで見つめていた。
アナウンサーが重々しく入ってきた。
そして、アナウンサーはカメラを見つめた。
「ただいまより、重大な発表がございます。この放送をご覧の方は、皆様、ご起立願います」
暫しの間が空いた。
「天皇陛下におかれましては、かかる北米での事変に関しまして、畏くも御自ら臣民に対し、訓戒を述べ給われることとなりました。これよりは、慎んで、御玉音をお送り致します」
テレビからは君が代が流れる。
そして、最後の音が止むと、放送が始まった。流れてくるのは、若い、しかし君子としての力を持った男の声であった。そして、まさにそれこそが天皇その人の玉音であった。
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朕は、深く世界の大勢と帝国の現状とを鑑み、この非常なる措置を以て事態を収拾せんと欲し、ここに、忠良なる臣民諸君に告ぐ。
朕は、帝国政府をして、日本国と名乗る逆賊に対し、宣戦を布告せしめた。
そもそも、皇国と臣民の安寧を図り、世界の平和を乞い願うは、皇祖皇宗の遺された規範であり、朕は常にこれを守り通すものである。
先に米連邦に宣戦し、東亜に軍政を布きしこともまた、東亜の安定を念願するに出で、あらゆる帝国の行いは、常に、この遺範を出ずることはなかった。
されども、日本国とやらは、帝国の治安維持活動を、残虐なる行為だとし、非難した。
これこそ、朕が日本国とやらに宣戦を布告せしむる所以である。
朕は、今や日本国が朝敵となったと認める。臣民諸君には、これを敵とし、皇国が為に戦ってもらいたい。
神武天皇が御即位、建国より三千年。この皇国に敗北などあったか。ここで負けては、朕、如何にして皇祖皇宗の御御霊に謝れようか。
ついては、ひたすらに東亜全局の平和を念願し、それ故に帝国は戦うのである
日本国とその軍は、彼の将門に比類する朝敵である。その首魁、東郷大将は、その首を切られるべし。されども、その配下の者には罪はない。今すぐにでも帝国が軍門に下るのであらば、一切の叛逆を不問とし、帝国に迎え入れよう。
日本国とやらとその軍に告ぐ。朕と帝国は寛大にして、汝らの投降を認めよう。
臣民諸君に告ぐ。不遜なる叛逆に対し、最後の一兵となるまで戦い抜き、ひいては、米帝の、大東亜を侵略したるをも撃滅せんと欲す。
この世界において、全ての人種、民族が共存し、平和に生き得る世界を顕現させることこそ、帝国と皇祖皇宗が最たる望みである。
汝臣民、克く、朕が意を体せよ。
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その後も厳粛に君が代が流れた。
そして、開戦に関する政府の発表などが続いた。




