ある男の記憶Ⅱ
男は、大和を操り屍人の掃討に乗り出した。
だが、屍人の圧倒的な数を見て、それは、自らとたった一隻の飛行戦艦では不可能だとすぐに理解した。
それでも、数少ない「残された」兵器である大和は、屍人に対抗する有力な手段であった。
男は、東京の近郊で生存者の集団と合流し、その防衛を助けた。彼らは、やがて新たな東京を作り出した。
男は、乗組員を集め、生存者の捜索と救助に努めた。彼の大和は、殆ど世界で唯一の、まともに動かせる兵器であった。他にも動く兵器はあると聞くが、どれも救助には使えないものばかりであった。
結果として、男の行動は、日本の復興を大いに早め、将来的には列国の中でも屈指の国家とすることとなる。
そしてある時、男は、屍人の群れを発見した。
これまで男は、屍人が集団になることなど見たことはなかったから、それは興味の対象であり、同時に脅威と見なし、恐れた。
男は、その群れを撃った。そして、その死体を研究のためと回収した。
その群れは珍しく逃げ惑っていたが、男に容赦はなかったのだ。僅かに討ち漏らしたものがいたが、男は興味を払わなかった。
「屍人は、滅びるべきなんだ」
男は、死体の山を見つめながら呟いた。それが、200年後の日本軍と日本の命運を変えるとは知らずに。