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終末後記  作者: Takahiro
1-6_内乱
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侵攻準備

崩壊暦214年11月5日14:12


「閣下、第五艦隊と第十二艦隊との間で戦闘が発生しました。第五艦隊はこれを制し、こちらに向かってきています」


「そうか。良かった」


チャールズ元帥は安堵した。これで、やっと味方が増えるのだ。結局、ワシントン駐屯艦隊や南米派遣艦隊などは、ことごとく現政府に味方した。


最後の望みは、南部で日本軍と向かい合っていた第五艦隊と第十二艦隊であった。この艦隊が味方しないと、チャールズ元帥は決定的に不利になる危険があった。


しかし、ハーバー中将の報告によると、この2艦隊は内乱を起こし、チャールズ元帥派の第五艦隊がそれを制したらしい。


これで、チャールズ元帥の臨時政府の方が、多くの見方を集めた。また、全ての艦隊の旗幟は鮮明となった。


6個艦隊がチャールズ元帥につき、4個艦隊は現政府に味方した。


「引き続き宣伝工作を続けるか。或いは、もうワシントンに攻め込むか、だな」


ひとまず、アメリカの勢力図は確定したと見えるが、まだまだ、どちら側にも、裏切者が出る余地は残されている。即ち、チャールズ元帥の味方から裏切りが出るか、ワシントンで暴動か反乱でも起こって、現政府が自然消滅するか、である。


もちろん、これで政府が倒れれば、最良の展開だ。犠牲は最小限に、戦闘も発生せず、チャールズ元帥の政府が作れるのである。更には、チャールズ元帥に正統性がおまけで付いてくる。チャールズ元帥は、「人民の代表」となり得るのである。


「閣下は、人が死なない方が良いですか?」


ハーバー中将は、珍しい質問をする。


「ん?それは、そうだが」


「で、あるならば、待つべきでしょう。ワシントンに呼び掛けを続け、市民の蜂起に期待すべきかと」


「そうか。んん、迷うな」


今回ばかりは、チャールズ元帥もポピュリズムを優先出来なくなっており、判断に迷っている。と、言うのも、幾つかの事情があった。


まず、欧州合衆国の介入が、時間が長引く程、起こり得ること。そして、ワシントン市民に蜂起の機運が皆無であることである。


「ルーズベルト大統領の支持率は、どのくらいだ?」


「およそ、ほぼ全ての市民から支持されています。連邦市民は、軍人を信用しないと見えます」


アメリカ、と言うよりも西洋諸国では、軍人が政治に関与するのを嫌うところがある。軍人は文民に従うべきというのが、大方の意見だ。そのせいで、文民が誘導すれば、簡単に戦争でも起こせる程、文民の発言に盲目なのだ。


かつては、軍が反対したにも関わらず、大統領が戦争を起こしたことも多々あった。軍部独裁もどうかと思われるが、軍部に力が無いのも、どうかという次第である。


「だったら、即座にワシントンを攻めた方がいいんじゃないか?」


確かに、蜂起の望みがないならば、クーデターで政権をとる方が良い。だが、ハーバー中将は反駁する。


「民衆も、訴え続ければいつかは、政府のプロパガンダに気づいてくれるかもしれません。その時まで、ひたすらに訴え続るべきです」


ハーバー中将にしては、珍しく感情的だ。


「中将にしては、随分と人道を気にするじゃないか。いつもは、もっと効率を気にすると思っていたが」


「別段、人道を気にしている訳ではありません。私は、健全な社会主義者として、最も多くの人を救いたいだけです」


これまで、ハーバー中将は、北西部の都市を放棄することには、一貫して賛成であった。一見、効率しか考えない男と思われていたが、実際は、その後ろの市民を守りたかっただけであった。


故に、最大数の人々を生き永らえさせることが、ハーバー中将の大義である。


「そうか。では、まだ待とうか。期限は、欧州合衆国に決めてもらおう」


欧州合衆国の介入が、ワシントン攻略を待つタイムリミットである。


「ありがとうございます」


ハーバー中将は、素直に感謝の辞を述べた。


ふたつのアメリカの冷戦は、もうしばらく続きそうである。




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