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終末後記  作者: Takahiro
1-6_内乱
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モスクワにてⅥ

そろそろ気温が氷点下を下回るモスクワでは、いつもの会議が開かれていた。だが、今回のクレムリンには、見慣れない面々が来訪していた。


ジュガシヴィリ書記長の前には2列の椅子とテーブルが並んでいる。その片側に彼らが、もう片方に、ジューコフ中将ら、ソビエトの軍人や政治家が並んでいた。


「ヘス総裁、モスクワは如何か?」


ジュガシヴィリ書記長は尋ねた。その相手は、国家社会主義ヨーロッパ労働者党党首のヘス総裁である。ベルリン蜂起に失敗した彼女らは、命からがら、モスクワまで亡命してきたのである。


「とても静かな街です。欧州合衆国も、このような国であって欲しいのです」


「ありがとう。そして、その希望を叶えてやろうというのが、我が国の意思だ」


ジュガシヴィリ書記長は、誇らしげに言った。


「本当ですか?」


「ああ。もちろんだとも」


「何をして頂けるというのですか?」


ヘス総裁も、正直なところ、ソビエト共和国に頼るしかない。だが、ソビエト共和国が信用ならないのもまた事実であって、話の裏を見極める必要があったのだ。


「ソビエト共和国は、ヘス総裁の党に対し、取り得る限りの軍事支援を行う。また、国家社会主義ヨーロッパ労働者党政権は、これを承認し、同盟を結ぼう」


今のところは好条件である。


「それで、私は何をあげれば良いのですか?まさか、一方的なギブでは終わらないのでしょう」


「ああ。一国を預かる者として、国益を守らねばならないからな。そして、我々の要求だが、まず、アフリカにおける権益は、我が国に譲ってくれ」


「アフリカですか」


現状、アフリカ連邦共和国は、自力では独立を維持できない程に弱体化している。今は欧州合衆国の介入で事なきを得ているが、その欧州合衆国の首がすげ変わった時、アフリカへの介入をソビエトにさせろというのが、要求であった。


「ふたつ目は、アメリカとの同盟を断ち切ることだ。今は日本とアメリカとの二枚舌外交だが、今後は、双方ともに関係を絶ってくれ」


長年、ソビエト共和国は外交的に孤立してきた。アラブ連合を除けば、世界の殆どが敵国であった。だが、欧州合衆国を味方とし、大日本帝国も滅びるとなれば、ソビエト共和国を取り巻く状況は、飛躍的に改善される。


「それだけですか?」


「ああ。これで全てだ」


さて、それから暫く、各陣営の中での会議が続いた。NSEAP側は、相当に揉めているようであった。だが、数十分後には、決着も付いたようである。


「ジュガシヴィリ書記長。私達は、欧州の土地へは一切干渉しない、という約束が得られるならば、先の条件を飲むということに決定しました」


そもそも、ヘス総裁の目的は、欧州合衆国の人々が幸せに暮らすことである。それだけを考えれば、アメリカもアフリカも必要ない。更には、世界一の農業国であるソビエト共和国との同盟を組むことは、かなりプラスに働くと思われたのだ。


「よかろう。欧州の独立は保証する。これで決まりかね?」


「はい。ご協力に感謝します」


ソビエト共和国とNSEAPの密約は、かくして結ばれた。






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