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終末後記  作者: Takahiro
1-6_内乱
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クーデター

崩壊暦214年10月30日13:43


「クーデターに参加すると表明した艦隊は?」


チャールズ元帥は尋ねる。


「現在、4個艦隊のみです」


対して、ハーバー中将は答える。


戦艦アイオワには、密かに始めたクーデターの状況が流れ込んでいる。


この日より前から、クーデターを起こすということは、艦隊司令官クラスの将官には伝えてあるのだ。そして、およそ2週間のシンキングタイムを経て、今に至っている。


だが、状況は芳しくない。チャールズ元帥は、政府の小飼いの第11艦隊などを除けば、およそ全ての艦隊が参加するであろうと思っていた。だが、現実はおよそ非情であった。


実際に参加したのは、全11艦隊のうち4に過ぎなかった。


幸いにも、参加した艦隊は、チャールズ元帥の近くに集中している為、クーデターは起こせなくはない。また、多くは日和見を決め込んでいるから、今後、クーデターに参加する可能性は泣くもない。もちろん、政府側につく可能性も否定出来ないが。


「どうするべきだと思う?」


チャールズ元帥は、頭を押さえながら、ハーバー中将に尋ねる。チャールズ元帥は、想定外の事態に、自信を失い気味だ。


「ここは、行動を起こし、日和見主義者をこちらに入れましょう。予定していた形のクーデターではなく、戦争を仕掛けるのです」


本来、軍の殆どが裏切ることで、政府を自然消滅させるのが、チャールズ元帥の戦略であった。しかし、それを出来る程の戦力は揃っていない。


で、あれば、政府との内戦に訴えるしかないのだ。


「アメリカ臨時政府、これを、戦争に使うのか?」


「そうです。それをアメリカ唯一の正統な政府とし、現政権の打倒を宣言します」


「なるほどな」


アメリカ臨時政府というのは、クーデターの後に宣言する予定であった政府である。そして、その性格は、軍部独裁である。


だが、現段階でのワシントン臨時政府樹立が不可能となった以上、これを旗印に、内戦を起こすしかない。


「政府を糾弾する証拠は揃っている」


即ち、政府が一部の軍需企業の為に戦争を長引かせたということ。政府が若者の命を無駄に散らしたということ。そもそも、この戦争はアメリカ側が起こしたものである、等々だ。


「はい。これを理由に軍部は政府を弾劾すると、宣言するべきでしょう」


「それで民衆は付いてくるかな?」


チャールズ元帥は、些か不安そうに言う。軍部独裁というのは、一般に受けが悪い。民衆が現政権を支持するというのも、十分に考えられることだ。


「それならば、戦争を終わらせた、という功績を使うべきでしょう。今のところ、民衆は、戦争に熱狂してはいません。寧ろ、厭戦の気風が高まっています。そこで戦争を終わらせた軍人が現れれば、支持は高まるでしょう」


「そうか。そうだったな。そもそも、戦争を終わらせるのは前提だったな。忘れていたよ」


この後東郷大将がウィニペグを訪れる。その際、停戦も結ばれる予定だ。確かに、即時停戦というのは、大きなインパクトを呼ぶだろう。


「まあ、民衆の支持は取り付けれるとして、タルタロス(92cm地上自走砲)の投入は出来るか?」


「可能です。実戦にも耐えうると思われます」


「宜しい」


タルタロスとは、最近実用化された兵器の名である。偶然にも、それを製造している工廠は、五大湖にある。そして、五大湖はチャールズ元帥の支配下にある。使わない手はないだろう。


技術士官によれば、もう使えるとのことだ。今回の戦いが、最初の実戦配備となるだろう。


「ですが、閣下、タルタロスを使えば、多くの艦が失われます。そうすれば、アメリカ連邦全体の軍事力が低下するやもしれません」


「確かにそうかもな。だが、今の政府がのさばるよりはマシだ」


チャールズ元帥には、従うべき大義があった。そして、その為ならば、アメリカ連邦の影響力の低下も厭わないのだ。


「それに、東郷大将も同時に日本を乗っ取ってくれるんだ。日本とアメリカが協力すれば、どんな国家も刃向かえないだろう?」


「そうなれば良いですが」


東郷大将も叛乱を起こすのだ。それで日本も味方になるとすれば、周辺国からの脅威は概ねなくなるだろう。


ソビエト共和国、アラブ連合、欧州合衆国が潜在的には敵足りえるが、それらの国家は仲が悪い。そして、単独では日米に立ち向かえない。ならば、この世界に、当面は脅威はないだろう。


「では、東郷大将と会う準備でもしておくか」


「はい。すべきでしょう。閣下の格好は、人と会えるものではありません」


髪はボサボサで、服もシワだらけである。そんな格好で外交とは、失礼甚だしい。


「ぐっ、そんなこと言うなよ。私は元帥なんだぞ」


「間違いがあれば指摘するのが部下の役目です」


「うん、何も言い返せない」


とまれ、チャールズ元帥は、東郷大将と面会することとなる。東郷大将も、相手の元帥がこんな男とは思わないだろう。




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