大化作戦
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崩壊暦214年10月30日13:18
東郷大将が大化作戦を宣言してより、2日が経った。
第一艦隊が駐屯していたカルガリーは、即日で占領された。およそ、電気、水道などのインフラは軍が整備している為、民衆に目立った動きはない。
もっとも、当のアメリカ人からすると、支配者達が勝手に権力争いをしているだけと見えるのだろう。そもそも、帝国政府も帝国陸軍も、後から現れて、都市を武力で制圧しているに過ぎない。
独立国家もクソもないといえばそれまでだが、歴史上、そんなことは幾度もあるから、文句も言えまい。アフリカや北アメリカ諸国などは、いい例だ。それらの国では、勝手に乗り込んで来た白人が、現地住民を無視して、勝手に独立を宣言した。
今回の独立宣言も、その類いに違いない。まあ、欧米諸国に対する意趣返しということにしておこう。
そして、旧カナダのさらに北部の都市、イエローナイフに、第一艦隊は辿り着いた。ここまで来るのに、ざっと24時間近くはかかるのだ。もっとも、この時代、都市と都市を繋ぐものは空路しかなく、飛行艦も一般的な船くらいの速度しかでないから、仕方もない。
「さて、全艦、着陸せよ」
東郷大将の号令で、第一艦隊は、空港に降り立っていく。相変わらず、普通の航空機には迷惑極まりないのだが、そこは仕方ない。
「遂に、大化作戦も終わりますね」
東條中佐は言う。
「そうだな。問題が起こらなければいいが」
「細心の注意をもって、臨みましょう」
「うむ。結構」
そして、第一艦隊は空港に降りた。東郷大将の危惧とは裏腹に、特に何も起こらなかった。
「地上部隊を展開し、イエローナイフ全域を制圧せよ。くれぐれも、民間人は傷つけるな」
先に向かった地上部隊が、イエローナイフの軍政庁、警察署を制圧しているが、まだ政府側の残党は多い。
地上部隊、およそ5000が、イエローナイフに広がる。そして、瞬く間にイエローナイフは占領されたのだ。
かかった時間は、僅かに4時間程であった。都市というのは、狭い。車を使えば、およそ1時間で横切れる程度のものでしかないのだ。
「閣下、これで、閣下の野望も、一歩進みましたな」
そう言うのは近衛大佐である。
「ああ。だが、まだまだ終わってはいない。世界に、これを広げなければ」
「世界、ですか。それまた、結構な時間がかかりそうですね」
二人は、酒場の常連と店主のように語り合う。そう言えば、この二人は、東條中佐が大和に来た時から、既に知り合いであるようであった。
「まあ、この人生をかけての大仕事だ」
「私も、お手伝いさせてもらいますよ」
「頼んだぞ」
そう言った東郷大将の目は、なおも希望を見つめていた。
さて、他の都市も、完全に制圧したとの報告が入った。これで、大化作戦は、完全に成功した。
だが、東郷大将の仕事は終わっていないのだ。
「では、飛行機の準備をしてくれ」
「はっ、了解しました。護衛戦闘攻撃機も、既に用意してあります」
「結構」
神崎中佐は、現在、ウィニペグへの飛行機を準備している。そう、米軍が奪還した、彼のウィニペグである。東郷大将は、ここで、チャールズ元帥との会談に臨むのである。
また、使うのは、飛行艦ではなく、昔ながらの飛行機だ。普通の飛行機ならば、数時間でウィニペグまで到達出来るだろう。因みに、神崎中佐率いる航空戦隊の護衛付きである。
「面倒だが、行くしかないな」
「ええ。このようなパフォーマンスも、時には必要です」
東條中佐は言う。この会談の目的は、これから作る独立国家の正統性の確保である。また、米軍のチャールズ元帥も、クーデターの正当性を確保したいらしい。
「では、こちらの占領は東條中佐に任せる」
「はい。了解致しました」
東條中佐は、今回は留守番である。
「では、いざ、ウィニペグへ」
「お気をつけて下さい、閣下」
空母鳳翔より、1機の大型軍用機と、およそ20機の戦闘攻撃機が飛び立った。
大和のクルーは、敬礼でもってそれを見送った。