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終末後記  作者: Takahiro
1-6_内乱
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最後の作戦会議

崩壊暦214年10月26日12:12


大和にもたらされた報告は、アメリカ側(正確にはアメリカでもないのだが)からの、「承諾」の知らせである。


近衛大佐が持ってきた報告は、東郷大将を満足させるに十分なものであった。


そして、東郷大将は、私室で、例の3人と通信をしている。今回も、秘密回線を使った通信だ。


「近衛大佐によれば、10月31日、米軍のチャールズ元帥が、クーデターを起こす、とのことだ」


「おお。やりましたね」


伊藤少将は言う。


「ああ。これで、条件は揃った」


後は、こちらが如何に上手くやるかにかかっている。このように近くにいる時にしか通信をしない程、この計画は秘密に進めなければならず、バレる訳にはいかないのだ。


「まずは、味方を作らなければならん。両少将は、各々の旗艦の乗員に叛乱への参加を命じてくれ。勿論、それ以外の艦には伝わってはならん」


旗艦の乗組員くらいが、秘密を保持できる限界だろう。だが、それで何ができるのか、加藤少将は疑問である。


「たったの1個大隊程度の数で、何をするのですか?いっそ、全艦隊に通達して、一斉に蜂起するべきでは?」


「このメンバーには、各都市の制圧を行ってもらう。その後に、全艦隊に通達する予定だ」


「つまり、蜂起の下準備ということですか?」


「そうだ。あくまで慎重にことを進めたいのでな」


「なるほど。理解致しました」


事前に叛乱に参加する部隊は、帝国政府側の官吏を事前に始末しておく役目が任される。勿論、殺すという訳ではないが。また、行動の邪魔になる分だけを排除すればよく、その対象も多くはない。具体的には、艦隊が駐留する前線の数都市のみでよい。ならば、大した頭数は必要ないだろう。


「そして、あらかた邪魔を排除したら、帝国東方方面軍は、行動を起こす。我々は、ここに、独立国家の樹立を宣言するのだ」


「そして、戦争ですか?」


加藤少将は、目を輝かせている。アメリカに新政府を作った後は、本土と戦争をすると考えているのだろう。相変わらずの戦争狂である。


だが、戦争ではない。


「独立国家を宣言した後は、大日本帝国と平和条約を締結する」


「ん?はい?」


予想外すぎる答えに、加藤少将から敬語が消える。他国の地で反乱をしておいて平和条約とは、どこぞのアメリカ合衆国のようだ。いや、それよりも、何のために反乱を起こすのかがわからない。


「何故ですか?」


「まあ、言ってしまえば時間稼ぎですよ」


伊藤少将は、いつも通り、キザな声で言う。


「そうではあるが……まあいい。まずは、その意味から説明しよう。米軍は、そろそろ、クーデターを起こすと言う。だが、それが成功するかはわからないだろう?その間、我々の革命政府が盾となり、クーデターをさせてやるのだ」


「ほう、ずいぶんと、()()とはかけ離れた理由ですね」


クーデターの最中では、アメリカ連邦に、外に向ける軍隊は残らないだろう。その間、アメリカ連邦は極めて弱体化するのだ。そして、それに干渉すれば、容易にアメリカを支配できる。それを最もしやすいのが、帝国でなのだ


それ故、1日でも長く時間を取るため、平和条約の交渉に、嘘でも移ることで、即座に戦争を仕掛けるよりも時間が稼げるだろう。


「つまり、いつかは戦争を起こすのですか?」


「わからん」


「は?」


本日二度目の爆弾発言だ。東郷大将は、今後の計画もないと言うのか。加藤少将は、大将の正気を疑う。


「戦争になるかすら、決めていないと?」


「確かに、決めてはいない。だが、ある程度のプランはある」


「それは、どのようなものですか?」


加藤少将は、更に問い詰める。そんな大雑把な計画でいいのか、見極める必要がある。


「私は、本気で、平和条約が締結されることを祈っている。そして、あわよくば、平和のうちに、革命を成し遂げたいのだ」


平和条約というものは、割合本気で考えているらしい。時間稼ぎの小道具ではないようだ。


「そして、平和条約が破却されれば……」


それは、加藤少将が渇望する展開である。


「そう。戦争はやむを得んな。まさか我々が倒れれば、元の子もない」


「そうです。大義が大切です」


加藤少将は、そんなことを言いつつ、戦争、正確には戦闘、がしたいのだろう。加藤少将は決してサディストではないが、戦闘を楽しむ節があるのだ。こと、この時代の戦争では死者が大して出ないというのも、彼女の性格に拍車をかけた。


まあ、無用な人殺しはまずしないし、およそ正義の人と言える人格であるから、何とも文句が言いにくいのが現状である。


「戦争は、交渉が上手くいくかにかかっている。我々は、それを見届けることしかできん」


つまるところ、戦争か否かは、帝国政府の判断に左右されるものなのだ。まあ、万全の準備はしておくべきだろう。


「まずは、各々、この作戦を通達してくれ。その後は、私が正式に作戦を発表する。また、米軍との停戦も宣言しよう」


まずは、しっかりと足元を固めなければならない。その後は、政治パフォーマンスと叛乱である。


通達は終わった。将軍たちは、これを伝えに行くのである。



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