時計塔にてN/A
サブストーリーです。
チャールズ中将と近衛大佐は去った。
「ねえ、レイ君、これが君が望んだ世界なの?」
「濫觴の撥条塔」がある尖塔の上層には、ノンの他にも人が住んでいる。また、一階はあれほどの荒れようなのに、二階や三階は驚くほど綺麗である。
塔は、四階建てであり、階段は螺旋階段がひとつあるだけの、簡素なものだ。
その二階は、壁の殆どが本棚になっており、本に囲まれた落ち着いたフロアである。
そして今、ノンが話しかけるのは二階の住人、いつも気だるそうにして豪華な椅子に座っているパーカーの少年、零だ。
「はっ、そんなはずはないだろ。革命を引き起こしても、結局、その支配は、奴等の手の内になってしまったじゃないか。」
レイは、酷く不機嫌そうに言う。
「それは……」
ノンは言葉につまる。
「あの二番目は、どうにかならないのか?」
「彼は、私と同じモノだから、それは無理かな。それに、私は三番目だから。」
「まったく、蛇に負ける使いとは、零楽甚だしいものだな。」
「いやー、それは、ヒトが勝手に呼んでるだけだからさ。はは。」
ノンは、ばつが悪そうにしている。零は予想外に不機嫌になってしまい、ノンは、何とか事態を収集しようと努める。
「まあまあ、別に焦る必要はないでしょ。今はこんな場所でカフェやってても、いつかは願いは叶うよ。」
「まったく、カフェは自称だろう。それに、だったら、お前も手伝え。」
「うん、もちろんだよ!」
一応、ノンの方が立場が上なのだが、ノンは零のペースに完全にもっていかれている。
二人が口論をなおも続ける時、上の階から一人の男が降りてきた。
「やかましいぞ、二人とも。」
男は、これまた不機嫌そうに文句を言う。
「ごめん、多田君。ほら、レイも謝れ。」
「はっ?何で、僕が。…………す、すまない。」
「よろしい!」
しかし、白衣に身を包んだ孤高の男、多田博士はなおも不機嫌そうである。
「はあ、まあそんなことはどうでもいいんだが。レイに、激しく同情するよ。私も、こいつのせいで散々な目にあったからな。」
多田博士は、ノンを繰り返し雑菌か何かのように指差しながら、零に向かって言う。零は、何度もうなずいている。
「ごめんよ、二人とも。」
なんだかんだといって、彼らの不憫な顛末は、大体がノンのせいでもたらされたものであった。
ノンは、苦笑いしながら謝る。
「用事はそれだけか、博士。」
「まあ、そうだな。特に用はない。では、私は自分の研究に戻らせてもらうよ。」
「じゃあね~。」
多田は、先ほど下ってきた階段を登っていった。
「ふう、丸く収まったね、レイ君。」
「まあ、そうだけど。言っとくが、僕は夢の実現はまだ棄ててないからな。」
「うん。私も、想像主の命令があるから、手伝うよ。これからも、頑張ろうね。」
「ああ。」
二人の口論は、多田の来訪で収まったようだ。意外と、彼の目的は、これだったのかもしれない。
「今日は、誰か来るのか?」
「今日は、暇かな。」
「そう。たまにはカフェの整頓でもしたらどうだ。」
「ははは…まあ、いつか、ね。」
そう言うと、ノンは螺旋階段を降り、「濫觴の撥条塔」へと向かう。
「ふう、私もN.I.としてちゃんと仕事しないとな。」
そう言うと、ノンは、カフェの掃除に勤しむのだった。だが、あまりの汚さに掃除を諦めたのは、言うまでもない。
レイ君のもとネタは、レーニンですね。