急降下爆撃
崩壊暦213年12月11日02:52
神崎中佐と松原中佐率いる第一航空艦隊は、先の攻撃で戦力を削いだ米艦隊に全速力で向かっている。
「全機!急降下爆撃用意!」
航空艦隊は飛行艦隊より上空を飛行し、対艦攻撃を行おうとしている。
「っと。さすがに直掩は来るか」
「全機、編隊を崩さず確実に撃ち落とせ」
敵空母から戦闘攻撃機が次々と発艦していく。だが、どうもまとまりがない。半分以上の戦力を失った影響は、絶大と見える。
加えて、米艦隊の対空能力は非常に低下している。艦載機に頼らざるを得ないのだ。
「相手は敗残兵どもだ!私達なら負けるはずはない!かかれ!」
両軍の戦闘攻撃機が戦闘を始める。およそ400の戦闘攻撃機が入り乱れる。
だが、その趨勢は明らかだった。
日本軍は組織的な行動を保ち、米軍機を次々と挟み撃ちにし、撃墜していく。例え、米軍機に後ろをとらても、仲間がすぐに助けた。
「次は右のやつだ。いくぞ」「了解!」「くっ、後ろに!」「すぐいくぞ、待ってろ!」
日本軍は、連携をついに乱さない。
数分後、勝負は決したようだ。米軍機は艦隊に逃げ始めた。
「よし、このまま敵艦隊を爆撃する!」
神崎中佐は攻撃を指示し、日本軍機は米艦隊に一直線に向かっていく。
「来たか。各機、回避行動をとれ」
米艦隊はなけなしの対空砲火を浴びせてきた。だが、それは非常に薄く、効果はない。
日本軍機はいとも簡単に避けていく。
やがて、米艦隊の目前に彼らは来た。
「落とせ!」
神崎中佐の号令で、日本軍機は急速に、鉛直に降下していく。
この時代の戦闘攻撃機は、運動性能において、第七世代戦闘機に匹敵する。その為、鉛直落下は容易であった。
一応、第八世代戦闘機は存在するが、運動性能が高すぎて、人間がついていけないということで、極僅かしか生産されていない。
日本軍機は米艦隊に正面から突撃する。相手からしたら、敵が真っ逆さまに落ちてくるのだから、相当な恐怖だろう。
なおも対空砲は火を吹き続けているが、意味はない。
そして、降下に合わせ爆弾が投下されていく。至近距離から放たれた爆弾は殆どが命中し、米艦隊を炎上させていく。
爆撃を終えた日本軍機は急速に離脱し、艦隊に戻っていく。
「駆逐艦4大破、7中破。巡洋艦1大破、4中破。戦艦4中破といったところか」
簡単に戦果がまとめられ、神崎中佐に届いた。
成果は上々。特に割り当てを多めにした戦艦に関しては大損害を与えた。先の攻撃と合わせれば、壊滅的打撃を与えたと言えるだろう。
言葉の定義の問題だが、この時代の飛行艦に関する限りは、「大破」は戦闘不能を意味する。また、「中破」は主砲や対空砲に致命的損害を与えた事を意味する。
細かい戦果はまた後で確認されるだろうが、敵の撃てる主砲の数は、第一艦隊と同程度、もしくはそれ以下まで低下しただろう。
「みんな、最高の働きだった!さあ、凱旋だ!」
第一航空艦隊は、おのおのの空母に帰投していった。それは、まさしく勝利の凱旋であった。
神崎中佐強い。