Iの会談
サブストーリーです。あいつらが結集します。
何処とも知れぬ荒野。屍人が徘徊し、およそ生ける人間の気配はない。もっとも、屍人が人間かという議論は、今なお、結論されていない議題でもあるが。
さて、そんな荒野に、人間の体を為す存在が3つ。
ある者は、東洋の軍服を纏い、ある者は、西洋の礼服を纏い、残りの一人は、これまた西洋の使用人の如き格好をしている。
彼らに名はない。だが、人間界で活動するには困難だとして、一応の名はある。
「皆さん、お久しぶりです」
礼服を纏った者、イルクナー卿は言った。
「久しぶりだな」「久しぶり~」
残りの二人、ノンと石井もまた、挨拶を交わした。
「そうだね、まず、全員が一応敵対しちゃったね」
「ああ。珍しいことだ」
「確かに。これまで我々は、2対1となるのが常でしたから。楽しいことになりそうです」
イルクナー卿は、少々難しい演劇の司会のように言った。その様子は、心底楽しみそうだと見えた。
「ナポレオンの時は、ノンと私が組んでいたな。太平洋戦争の時は、ノンとフォルクハルトか」
「いかにも。常々、石井さんは負け側にいますね」
「それが役目だからな。前に、ヨーロッパの辺りで会った哲学者によると、歴史は、常に三竦みで動くらしい。そうすると、負ける役がいなければ、歴史は回らないだろう?それが私だと思っておこう」
石井に、負けを悔しがる様子などなかった。寧ろ、それを誇りとしているようだった。
「まああんたは、そういうの興味なさそうだからね。」
「ああ。観察者としての役目を果たせれば、それで十分だ。」
その時、イルクナー卿が、二人の会話を塞き止めた。
「そうそう。ノンは、日本革命について、どう思いますかね?これは、君の理想に反する気もしますが」
「そうでもないよ」
「ほう、それはどうして?」
「『例え人々が真実を知らなくても、幸福ならばそれでいい』って、私は教えられたからね!」
ノンは、無駄に誇らしげであった。対して、イルクナー卿は、若干呆れ気味である。
「そうですか。良いことを聞かせてもらいましたよ」
「うん。絶対興味ないよね」
その時、今度は石井が、閉塞した空気を破った。
「遺跡についてだが、3日前に見たが、今なお動いている。ペルシャと出雲は健在だ」
「ヴァルホルも健在ですよ」
「全部オッケーだね。それと……」
彼らの会談は、まだ続く