モスクワにてⅤ
サブストーリーです。実は、僕、これを香港で書きました。因みに、香港では令和が一時間遅く来ます。
ソビエト共和国は、世界で最も寒い国だ。それ故、200年前の文明崩壊の時には、屍人のウイルスの伝播が最も遅かった。つまり、最も戦前の状態を維持した国家であるのだ。
しかし、だからといってソビエト共和国が世界最強かと言えば、そんなことはない。そもそも、ソビエト共和国自体が、崩壊後に最も遅く成立した国家である。それは、各都市に生存者が多く集まり、十分に自立できたからである。
また、そもそも世界で最も寒いのだから、人の母数が少なかった。結果、国力においては、アメリカ連邦、大東亜連合に負けており、欧州合衆国とも互角といったところだ。
また、ジュガシヴィリ書記長が余りにも人民を思いすぎる為に、周辺諸国からの孤立を招いている。もっとも、食料自給率は世界一だから、それに問題はないが。むしろ、食料は有効な外交カードとなりうる。
さて、モスクワの赤の城、クレムリンでは、ジュガシヴィリ書記長を座長に、軍部、内閣からの代表者が集まっていた。
この時の議題は、大東亜連合で起こった大規模反乱についてであった。
「これで、東郷大将が行動を起こすか?ジューコフ少将」
ジュガシヴィリ書記長は問いかけた。
「その可能性は高いです」
兼ね兼ねより、東郷大将との連携は計画されている。返答はしていないが、いずれその時が来れば、戦うこととなるだろう。
「極東艦隊には、戦争準備をさせておかねばな」
「はい。朝鮮出兵の準備をさせます」
極東には、中華民国との国境に3個、カムチャッカ半島に2個艦隊が配備されている。些か足りないとも思われるが、計画通りに事が進めば、これで十分である。
「くどいようですが、キエフの出番はないのでありますか?日本を攻撃するのであれば、キエフをお出し下さい」
ロソコフスキー少将は、キエフの出撃を訴えた。キエフを出さないというのは、戦力の遊兵化に繋がるだけである。
「それは、許可できん。我々の敵は、日本だけではないのだ。むしろ、最強の戦略予備となってくれ」
「……承知しました」
アラブ連合、欧州合衆国もまた、ソビエト共和国の敵である。ソビエト共和国は、常に三方に戦力を分散せざるを得ない。しかし、最大の脅威は日本である。
「アラブ連合に動きは?」
ジュガシヴィリ書記長は言った。
「現状、ありません」
ジューコフ少将は答える。
「うむ。それと、欧州合衆国の、ヘスとかいう奴のことだが、支援の計画の進捗は?」
「現状では、欧州合衆国東方軍との秘密交渉の最中です」
「よろしい。引き続き頼むぞ。次の、議題は……」
彼らの会議はまだ続く。
令和最初の小説がこれかよって。